9 体験
「じゃ、とりあえず今まで何人の男とヤッたか言ってもらいましょうか」
「そ……そんな事……」
ちらっと顔を上げ、弱々しく真理子が口を開いたその時、前田の手にあるクリップが口を開かせて右乳首に近付いた。
「言えませんか?」
「! …………」
一瞬、真理子の口が開きかけたがすぐにつぐみ、きっ、と前田を精一杯の力で睨んだ。
「……い……言える訳……」
「そう……じゃあ、久保寺巡査が知ってるかな……」
前田はにやっと強者の持つ余裕の笑みを見せてそう呟くと肩越しに優華を見た。そして手にしたクリップを優華のそばに立つ松永に見せるようにかざした。
「松永、使うか?」
「あ、いいかも」
松永は呼応するようににやっと笑うと優華の制服の胸元に手を伸ばした。
「い……!」
優華は怯えた表情を見せ、短く甲高い声を上げると野村と松永の拘束から逃れようとするように体を揺らした。
しかし、がっちりと抑えている2人の手から離れる事はできる訳がなく、松永の手は優華のシャツの胸元に伸びてネクタイの下のボタンを1つあっさりと外した。
「動くなよ、ボタン外しにくいぜ」
「やだ! やめて! お願い!」
自分の胸にもあのクリップが付けられる。
真理子の悲鳴のような声や激痛で歪む顔を見続けていた優華はその恐怖に突き動かされ、激しく首を左右に振って抵抗を示した。
「や、やめなさい! 優華には手を出さないって……」
その時、真理子の悲痛な声が飛んできた。僅かに涙に潤む目を優華の胸元に手を伸ばす松永に向け、弱々しく睨んでいる。
前田はそんな真理子に軽く笑いかけながらクリップをポケットに押し込むと、そっと顔を近付けてソファから床に伸びる彼女のブーツを左手で撫でた。
「でも、その代わりに桜井巡査もなんでもするって言ったでしょ?」
「…………」
前田の言葉に真理子はぐっと喉で言葉を殺し、再び前田を睨むように見た。
色々言いたいのだが優華の存在がそれを言わせていないのは誰の目から見ても明らかだった。
「…………6人よ」
一瞬、視線を前田から外したのと同時にポツリとそばにいる前田や吉田だけに聞こえるような声がその口から漏れた。
すると真理子の隣に座っている吉田が彼女の左乳首に下がるクリップを摘み、ぐっと引っ張った。
クリップの強烈な力で挟まれた乳首が千切れんばかりに伸び上げられる。
「いいっ! 痛いっ! 痛いいいいっ!」
「それくらいの大きな声で言えよ! 優華ちゃんに聞こえないだろ!」
「ろ、6人! 6人よっ!」
真理子の悲鳴のような声が部屋に響いた。当然、優華や松永にも痛いほどその声は耳に届いた。松永は真理子の言葉を聞いてふうんと感心したような息を一つ吐き、そっと彼女の胸元から手を外した。
「26で6人か……ちょっと浮気性じゃねえか?」
「婦警って真面目かと思ってたけどそうでもないんだな」
そばにいる野村も嬉しそうににたっと粘着質な笑みを浮かべた。
「……はあ……はあ……」
優華は拷問のような事を受ける真理子を見て、何も言う事ができずに荒い息をしながらじっと見つめていた。
処女同然の優華にとって尊敬する先輩の6人と言う経験した人数に純粋に驚きを感じ、言葉が出なかったのだ。
そんな唖然とした優華の表情を肩越しにチラッと前田が見るとふっと小さく笑った。
「6人……なかなかの数で。で、最初はいつ?」
そしてそう訊くと乳首に下がるクリップをいつでもいじれるように手をかけた。真理子はびくっと肩を震わせると口を開いた。
「18、18歳の夏休み!」
「誰と?」
「……ど、同級生! 高校の!」
「どこで?」
「か、彼の家っ! もういいでしょ! 離して!」
真理子の必死の言葉に前田は軽く笑ったままで弄ぶように手の中でクリップを軽く揺らした。
「その男とは何回ヤリました?」
「そ、それだけ! それだけよ! その後別れたのよ!」
「フッた? フられた?」
「……ふっ、フッた! 私が! 彼が二股かけてて……」
早口で言う真理子に吉田がひょいと泣き出しそうなその顔に顔を近づけさせた。
「それってフられたんじゃないのか! なかなかヤラせない婦警さんに嫌気がさして他の女に乗り換えたんじゃねえのか!」
「…………」
真理子ははっとし、一瞬悲しそうな表情を見せて黙り込んだ。すると前田が乳首を軽く引っ張った。
「ひっ! やめて! 痛い!」
「2人目は?」
「だ、大学の剣道部の先輩!」
「そいつとはどのくらい付き合ってた?」
「に、2年……」
「じゃ、結構ヤッた?」
「…………」
黙って真理子が頷くと前田はぐっと少し強くクリップを引っ張った。
「痛いっ!」
「ちゃんと答えは口に出しましょう」
「そ、そうよ! よく寝た!」
胸からの激痛に耐えるしかめ面を真理子は激しく左右に振りながら悲鳴のような声を上げた。すると前田はふっとクリップを引く力を弱め、軽く笑った。
「その男とどこでヤッてました?」
「私の下宿……」
真理子の声のトーンが急に下がり、視線も僅かに宙を泳いだ。
何かを隠している。
その顔を見て感づいたのか、軽い笑顔を見せていた前田が再び軽くクリップを引いた。
「いやっ!」
「下宿だけ? 他に違う所でしたんでしょ?」
「いっ! あ……け、剣道場の用具室とか……」
「他に?」
くっともう僅かに強く引くとびくっと真理子は痛みに肩を振るわせた。
「……こ、公園の茂みとか……が、学校の非常階段……!」
「野外プレイか!」
吉田が真理子に突っ込むと真理子は小さく頷いた。すると前田がぎっとクリップを引っ張った。
「いいっ! そ、そうよ!」
「はははははっ! 婦警さんが野外プレイ!」
真理子の返事が口から出るのと同時に部屋に男たちの笑い声が響いた。真理子は男達の笑いに顔を赤く染めて俯いた。その時、目尻から恥ずかしさからかあるいは悔しさからか涙が一筋こぼれた。
ひとしきり笑った松永が優華をそっと撫でながら苦しむ真理子を見た。
「なんだ、婦警さんは露出狂か!」
「や、やっぱり真面目な女ほど……なんだな」
そういう野村も嬉しそうに笑っていた。真理子はそんな男達の笑いに耐えるように俯き、僅かに肩を震わせながらちらっとその潤む目を前田に向けた。
「もう……いいでしょ……クリップを……外して」
「その野外プレイは婦警さんの趣味?」
真理子の懇願を完全に無視して前田が質問を続けた。一瞬、真理子ははっとした表情を見せるとふっと前田から視線を外した。
「…………」
「趣味なのって訊いてるだろ?」
抵抗するように黙る真理子に前田は優しい口調でそう言うと、真理子の乳首に下がるクリップを手にし、それを目一杯引っ張った。
僅かにくすむ乳首がゴムのように伸ばされ、乳房の形も歪んだ。
「痛い! 痛いいい! 千切れる! 千切れるっ!」
「だから千切れないって。外でするのは婦警さんの趣味なのかって」
「……そ……そうっ、私が言ったから!」
「外ですると燃えた?」
「い、いつもより激しかった! か、彼も私も! 痛い! 痛いい! もうやめてっ!」
「嫌じゃないんだ。野外」
「そうよ! 外の方が燃えるし何回も……もういいでしょ! やめて!」
そう言ったその時、前田はぱっとクリップから手を離した。びよんと乳首が元に戻り、乳房も元の整った形にあっという間に戻った。
「くっ……はあはあ……」
「じゃ、レイプもいいんだな! 感じるんだな!」
吉田はがくっと頭を垂れる真理子の顔を覗き込んで言うと、彼女は弱々しく首を横に振った。
無理矢理過去の記憶を男達の汚れた手で引きずり出されている。
そんな無残な真理子の姿を見せ付けられた優華はただ唖然としていた。
「優華ちゃんの先輩ってちょっと変態じゃないのか? 外でヤッて燃えるって」
唖然とする優華の背中を松永がそっと撫でながら耳元でささやいた。しかし優華は否定の言葉を口にしたり首を振ったりする事をせず、ただ責められる真理子をじっと見つめていた。
いや、真理子の今まで見る事ができなかった部分を見せ付けられ衝撃で固まってしまい、目を外す事ができなかったのだ。
そんなマネキン人形のような優華を松永は制服の上から撫で続けた。
「でも、まだまだだろうなあ。あと4人とヤッてるんだから面白い話が聞けるんじゃねえか?」
そう言うと松永は期待するように微笑み、優華は表情を変える事なくただじっと真理子を見つめていた。
「で、野外プレイの彼と別れてからは?」
真理子のブーツを撫でながら前田は満足そうに笑ってさらに訊いた。だが真理子は肩で息をしながら訊いた事に答えようとしなかった。
乳首を千切れんばかりに引っ張られ、なおかつ他人に言うべきではない自分の過去まで言わされ、その衝撃で質問への即答ができなかったのだ。
しかし、真理子の頭の中を整理させる余裕を与える事を前田はしなかった。また真理子のクリップに手を伸ばしてそれを引っ張った。
「いいっ! 痛いいっ! もうやめて!」
「それからは?」
「後輩と1年付き合った!」
乳首を引けばぞろぞろと真理子の口を彼女の過去が突く。
そんな機械仕掛けの人形のようになっている真理子に前田は思わず軽く笑った。そしてさらにぐっとクリップを引いた。
「そいつとも野外で?」
「し、した! が、合宿の海の岩陰とか!」
真理子がそう言ったその瞬間、今まで忘れようとしていた記憶が呼び起こされたのか、痛みに歪む顔に僅かに影がさした。それを見逃す前田ではなく、引いた乳首を僅かに左右に振った。
「いやっ! 動かさないで! 千切れる!」
「大丈夫だって。その男と何かあったのか」
「それは……」
真理子の口がつぐむ。すると前田はクリップをこれ以上乳首が伸びない限界点まで引っ張った。
「きゃああっ! やめて! 本当に千切れる!」
「何があったんだ」
「わ、別れる時……痛いい! そ、外でないと燃えない変態先輩にはついていけないって言われて……」
そう言った瞬間、また真理子の目から涙がこぼれ、声も涙声のような震えたものになった。しかしそんな真理子に同情をする者はここにはいない。
「そりゃそうだろ! その後輩はいい判断をしたな!」
吉田がけらけら笑いながら真理子の制帽をぽんぽんと軽く叩いた。真理子は両目から涙をぽろぽろこぼし、嗚咽のような声を僅かに上げた。
すると前田は優しげにふっと小さく笑い、不意に手を緩めた。だが、いつでも引っ張れるように少し、力は手に入っている。
「……その後は? そんな事言われて別れたんだから男とヤルのはやめたんだな」
「…………同級生と……先輩と…………」
「短い間に2人とヤッたのか!」
真理子の言葉が終る前に吉田が嘲笑うかのような口調で言った。そして屈辱の涙に濡れる真理子の頬に顔を寄せてそっと彼女の顎の下を撫で上げた。
「婦警がヤリマンとはな。そんなんだから警察はダメなんだよ!」
「ち、違う……!」
真理子は弱々しい眼差しで吉田を見て言葉を漏らした。すると前田は物を言う障害となる痛みを和らげさせようとしたのか、またぱっと手を離した。
乳房が元に戻り、ほっと真理子は一息つくと、吉田をキッと見た。
「あんな事を言われて……ショックだった…………心の傷を癒してくれる人が欲しかったのよ! あの時は……愛のあるセックスをしている時が一番癒されたの! 平気な顔してレイプをして女を踏み躙るような獣のあなた達には絶対分からない事よ!」
「なんだってこのメスポリ……!」
言い放たれた真理子の言葉に吉田はすぐにカッと来て思わず立ち上がった。しかし、そんな彼を前田がキッと鋭くきつい視線で制した。吉田は視線に従ってゆっくりと真理子の隣に座った。
前田はうんと一つ頷くと真理子のブーツを撫で、乳首から下がったクリップをピン、と弾いた。
「これで5人。あと1人は?」