8 痛撃

「んん……んんんっ……!」

 唇を吉田にしゃぶりつくように貪られていた真理子は耐えるようにキュッと閉じていた目を不意の光にはっと見開いた。


「いい表情に撮れた……」


 真理子は光の発信源の方を見るとそこに前田がデジカメを彼女の方に構えて満足そうに微笑んで立っていた。
 それを見た瞬間、彼女は顔をかあっと高潮させて首を振って吉田の唇を引き離させた。


「……んあっ! しゃ、写真はやめて!」

「え? どうしてもいいってさっき言ったでしょ? 別に写真を撮るだけなんだから……じゃ」


 そう言うと前田は優華に群がる松永と野村に視線を流した。


「松永、野村。2人も遊べよ」


 前田から視線と言葉を向けられた松永と野村はへへっと小さく笑いあった。


「もう軽く遊んでますよ……うんうん、いい乳だぜ……張りがあって……」


 松永は背後から優華を抱き締めながらその胸を制服の上から撫でた。


「お、俺はお尻なんだな……」


 そして野村は優華の側面に回って紺色のスカートの丸みを帯びたラインを両手で撫で回し、さらに愛しそうに頬ずりもした。


「ひっ! ……やぁ…………」


 再び体を弄ばれ始めた優華は吐息のような言葉を漏らし、体や足を2人の4本の手から逃れようとくねらせるように動かした。
 優華の整ったは顔をしかめられ、眉間に皺が寄って彼女の今の心理状態を如実に表していた。


「やめて!」


 優華が抵抗とも言えない拒絶の行動をするとすぐに真理子が声を上げた。その声に優華ははっとして真理子の方をさっと見た。
 真理子は真っ直ぐ優華の顔を見つめ、今までに見た事のないような厳しい表情を浮かべていた。

 それに対して前田は真理子の言葉を聞くとニヤッと笑い、そっとデジカメを彼女に見せ付けるように掲げた。


「じゃ、写真撮ってもいいんですね? さっきもそう言いましたよねえ?」

「…………」


 真理子は厳しい表情のままで、見様によっては悔しそうに小さく頷いた。すると前田はソファの上で横になる真理子と同じ視線の高さになるようにそっと屈み込んだ。


「ちゃんと言ってください。今度は忘れないように。写真を撮ってもいいんですね?」

「……い、いい……わ……」


 前田を睨むような厳しい目付きで真理子が押し出すように言う。
 警察官らしい厳しい視線を浴びるのを気持ちよく感じているのか、前田は萎縮する事なく彼女を見据えた。


「どんな写真でもいいんですね? あなたの後輩がしたようなのでも」

「…………!」


 一瞬、真理子の目に力が入った。すぐに返事をしない彼女に前田は優しく続けた。


「後輩がされたのに先輩が安穏としてるって……ズルイですよねえ……」

「わ……わかった……ど、どんな写真でも…………撮ればいいわ……でも!」


 真理子の目がきらめき、前田を睨んだ。


「絶対に……絶対に優華をもうあんな目には遭わせないで。私は約束するから……お願い! 絶対に約束して!」


 真理子の再度の言葉に前田は軽く微笑んで一つ頷いた。そしてすくと立ち上がると真理子の上にのしかかったままの吉田の背中をぽんと叩いた。


「再開だ。キスの写真は撮れたから他の事をしてくれ。どんな写真でも撮っていいって言うからな」

「丁度、キスにちょっと飽きてたんですよ」


 吉田は嬉しそうににやっと笑うと真理子の胸に手をやった。


「!」


 ぴくっと真理子の体が震えた。過敏な真理子の反応に吉田は笑ったままでその豊かな膨らみを両手で撫でた。


「次はここだ……でも、普通に揉んだり吸ったりじゃ物足りないだろ?」

「…………」


 真理子は口を固く閉めて何も言わず、首も振らない。とにかくこの悪夢のような状態をひたすら耐え抜こうとしているのは目に見えていた。
 吉田はそんな真理子を溶かそうとするかのように優しげな手付きで制服の上から彼女の乳房の頂上辺りを撫で回した。


「揉んだり吸ったりはどんな男でもするからな……でも、俺は違うぞ!」


 そう言うと吉田は急に手を胸から制服の上着のボタンに移し、金色のボタンを一つ一つ外し始めた。


「な、何をするの! やめなさい!」


 突然の行動に真理子はとっさに手錠で拘束された手を上着の袂に置き、足をピシッと閉めて体を硬直させた。
 その瞬間、手にボタンを外すのを邪魔された吉田が真理子の動揺した顔を睨んだ。


「何でもしていいんだろ! あんたがダメなら向こうでするぞ!」


 そう言って吉田が「向こう」を指差した。真理子ははっとして指の方を横目で見ると、怯えた悲しげな表情で真理子を見つめる優華の姿があった。真理子は一瞬、悔しそうな表情を浮かべるとすっと手の力を抜いた。


「よしよし……」


 そう言いながら吉田は抵抗をしなくなった真理子の上着のボタンを全て外すと、ばっとそれを左右に開いた。
 そしてそのままネクタイを弾き上げてシャツの小さなボタンに手をかけた。


「ふふふふぅ……」

「…………」


 制服のボタンを外すのに興奮しているのか吉田の呼吸が荒くなり、瞬きも忘れて外されて行くボタンを見ていた。

 真理子はキュッと目を閉じて嵐が過ぎ行くのを待つように声も上げずに鼻から呼吸をするだけ。優華と言う鎖に繋がれ、彼女はただの着せ替え人形のようであった。


(……ごめんなさい……ごめんなさい……)


 何も出来ずに制服を剥がされようとしている真理子に優華は心の中で何度も何度も謝っていた。

 人質となっている自分の為に自らの身は犠牲になってもいい。そんな警察官の鑑のような真理子の使命感や行動。それに対してそんな立派な先輩を陥れて辱めを受けさせている自分。


(私は……私も……警察官…………なのに……)


 同じ婦人警察官なのにこの違い。優華は自分が仲間を売った裏切り者のように感じてひどく責め、悔やんだ。


「本当、後輩思いだなあ」


 その時、また松永が優華に囁いた。彼は彼女の耳元で囁くとそっと真理子には見えないように優華の背中に右手を回してヒップにそっと手をやった。


「ひっ」

「……いや、警察官としては当たり前かな? ああするのは彼女は真面目な警察官なの?」


 少しふざけたような口調で松永が囁いて訊いた。優華はそれに対して黙って何も返事を返さなかった。


「訊いてるだろ」


 松永がそう言った瞬間、ヒップにあった彼の手が突然蠢き、彼女のヒップを制服の上から鷲掴みにした。


「いっ! ……そ、そう……ま、真面目な人……」


 優華の口から途切れ途切れに答えが出てきた。松永はうんと一つ頷くと鷲掴みにした手を広げ、再び優しく撫でた。


「どう言う風に?」

「……し、仕事はできるし……みんなから信頼されてる…………それに……明るいし面倒見も……いい……」

「いい婦警さんだなあ……」


 いい婦警さん。優華は松永のこの一言に僅かに体を震わせた。

 自分も「いい婦警さん」ってみんなから言われるように目指していたはず。それがいい婦警さんを陥れる片棒を担いだ悪い婦警さんになってしまっている。

 優華は松永のこの一言にひどく自分が情けなく感じた。


「で、でも」


 そんな時、優華の足元で屈んでいる野村が呟いた。


「なんだ?」

「そ、そういう女に限ってセックスの趣味は……ら、乱交とか変態プレーが好きだったりするんだな……」


 真顔で野村が言った事に松永は思わず吹き出した。


「そりゃいいや。普段は優秀で市民に愛されてるけど実はSM趣味の婦警さんとかスカトロ趣味の婦警さんか!」


 そんな事、絶対ない。


 大きな声でそう言いたかったが優華の口からなぜか言葉が出なかった。


 ピッ。


 そんな時、デジタルチックな音と共にフラッシュの光が部屋を一瞬、包んだ。


「いい絵だ」


 前田が撮った物、それはシャツを肌蹴させてブラに包まれた両乳房を露にさせた真理子の姿だった。吉田は前田が写真を撮ったのを見ると再びその胸に手を伸ばした。


「じゃ、次はブラを……あ、これフロントホックだ! 男に外させやすくさせてるのか!」

「……そ……そんな訳……」


 反論する口調に勢いや力はない。逆らえば自分ではなく優華に男達の手が伸びるからだった。


 プツッ。


 吉田は片手で巧みに真理子のブラのフロントホックを外すと、左右のカップが観音開きのように開いて豊かな裸の乳房が露になった。
 肌の曲がり角、26歳と言うのに白く透き通るような肌に張りのある乳房。そして少し色のくすんだ乳輪と乳首。若さと経験が備わった、そんな胸だった。


「…………」


 その瞬間、真理子は顔を赤く染めながら横に背け、下唇をきゅっと噛んでひたすらに黙っていた。


「いい胸してるな……婦警ってみんなこんないい体してるのか?」

「久保寺巡査もそうだから……きっとそうなんだろ。あと、鍛えてるんだろ?」


 そう言いながら前田は露になった真理子の乳房と乳首にデジカメを向けていた。


「ところで吉田。乳を出してどうするんだ? 揉んだり吸ったりしないって言ったが……」

「ちょいと小道具を……」


 そう言いながらシャツの胸ポケットから何かを取り出した。それを見た前田はやや呆れながら、しかし軽く笑った。


「……そんな物用意してたのか」

「こう言うのもいいでしょ?」


 吉田の人差し指と親指に摘むようにして持たれたそれは書類束を挟むワニ口クリップだった。前田と吉田の会話を聞いた真理子がその方を見ると一瞬にして顔が引きつり、顔色が失せた。


「ひっ! な、何をするの!?」

「何って……決まってるだろ!」


 そう言いながら吉田は真理子の左の乳首を摘んだ。


「ここに挟むんだ! どうせ摘んだり吸われたりはされてるんだろ? それに……」


 そこまで言うと吉田はそっと乳首から手を離し、ぴんと指で弾いた。


「ひょっとしたら洗濯バサミ位はここに挟んでるかもしれないしな!」

「そんな……私は……そんな! いやっ!」


 真理子は首を激しく振り、足や腕をばたつかせようとした。しかし、暴れるのを察知したのか前田がさっと彼女のブーツに包まれた脚の足首辺りをグッと抑え、吉田が彼女の腹の辺りを抑えた。

 そして吉田はクリップを開き、その口を真理子の左乳首に向けた。

 真理子は顔をしかめ、怯えたような眼差しでそれを見ると制帽が脱げるくらいに首を左右に振った。


「やめて! やめてっ!」

「それって結構痛いんだよな。俺、一度指に挟んだら少し紫色に変色したからなあ」


 怯える真理子を落ち着かせるようにブーツを撫で、同時に動揺を誘うように前田が呟く。


「いやっ! お願い! やめて!」


 真理子が必死になって哀願をしている。そこにさっきまでの毅然とし、後輩を守ろうとする先輩婦人警察官としての姿はない。恐怖に慄く普通の女。それだけだった。

 少しずつ真理子の婦人警察官としての顔を剥いでいく快感に吉田はニタッと笑って黒光りするクリップをゆっくりと彼女の乳首に近づけていった。


「ほら、行くぞ!」

「ひっ! お願い! やめてっ!」


 クリップが真理子の乳首を口に入れ、ゆっくりとその口を閉めていく。徐々に挟まれる乳首を真理子は首を振るのを忘れて見ていた。


「い……痛いっ! 痛いいいっ!」


 そして吉田の指がクリップから離れ、左乳首にそれが下がった瞬間、真理子の悲鳴が部屋に響いた。
 乳首と言う敏感な感覚器を襲う激しい圧迫痛に真理子は体を悶えさせた。


「離して! お願い! 千切れるっ! 千切れるからあ!」

「それくらいで千切れる訳ないだろ! ほら、起きろよ!」


 吉田はそんな悶える真理子の腕を掴むと彼女を引き起こすと、その脚を下ろし、腕を掴んだままで優華に向かい合わせて座らせ、脱げた制帽を被らせた。


「痛いっ! 外して! 外して!」

「もっと叫ぶんだ! ついでに泣いた方がいい写真が撮れるぞ! 前田さん!」

「まかせとけ」


 前田は真理子に向かい合うようにしゃがむとデジカメを向け、何度もシャッターボタンを押した。

 次々と左乳首に下がったクリップや痛みに歪む顔がデジカメに収められる。


「吉田、バランスが悪いな」


 その時、ふと前田がデジカメから目を離して真理子の右乳首を見てそんな事を口にした。真理子ははっとした表情を見せ、吉田の方に視線を流した。


「片方だけですから。もう一個クリップありますよ」

「いやあっ! もう止めて! クリップは、クリップは!」


 突然火が点いたように真理子が叫んだ。乳首が千切れるのではないかと思うくらいの激しい痛みがまた加わる。

 真理子は痛みの恐怖に身を震わせた。

 すると前田は吉田からクリップを受け取り、その口を開かせてそっと右乳首に近づけさせた。


「婦警さんは乳首にこんな物を挟まれた事はないの?」

「ない! ある訳ないでしょ! 早く、早く外して!」


 嫌々するように真理子は首を左右に振る。すると前田はにやっと笑った。


「じゃ、吸われたり舐められたりは?」

「…………」


 真理子は痛みに体を突かれながらも即答する事はなかった。


「わからないんですか……じゃ、もう片方にこれをつけたら思いだし……」

「い、いやっ! あ、ある! あるわよ!」


 慌てて金切り声のような声を上げてそう言った。
 前田はふっと一つ息を吐くとちらっと肩越しに背後を見た。
 そこには痛みに乱されている真理子を松永によって顎を掴まれて見せられている優華を見た。


「それじゃ……その辺りの事、詳しく教えてください……多分、後輩にも言ってないでしょうしね」


 そう言いながら前田はクリップをカチカチとその口を開閉させて目を輝かせて笑った。

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