第3章 正体
吉田はちらっと野村を見ると目で優華の方に何かするように促した。
「野村からやれよ。結構この婦警さんの歪んだ顔にそそられるからよ」
「じ、じゃあ、俺から……」
四人の中で一番縦にも横にも大きな体を持つ野村が一六〇センチ程度の体の優華に覆い被さるように彼女の太腿の上にしゃがみこんだ。
「…………」
優華は悲鳴や「やめなさい」と命令の声も上げずに、ただ口と目をキュッと閉じて顔を野村から背けさせた。
(口を少しでも開けたらまた舌を入れられる……)
別に口の中に舌を入れられても殺されたりする訳ではない。
しかし、さっき前田と松永の二人に口の中を蹂躙された時、優華は土足で自分の心に入られ、踏みにじられたように感じ、今まで味わった事のない屈辱感を受けていた。
これ以上自分の体の中に「異物」は押し込められたくない――。優華の偽らざる思いがそうさせていた。
「口、開けろ」
野村は俯く優華の顔をくっと自分の視線の先に上げさせて自信なげな命令の口調で言った。しかし優華はがんとして口を開こうとしない。
彼女は閉じていた目を開けるときっと視線の先にある野村の暑苦しい顔を睨んだ。
(私は警察官よ……あなたのような人の命令に応える訳にはいかない!)
優華の鋭い目線にそんな強いメッセージが乗せられていた。野村はそんな優華の表情を見ると気に食わないのか、あからさまにムッとした表情を浮かべた。
「なんだよ、その顔はよッ!」
突然、語気を荒げると厚ぼったい手を振り上げ、優華の頬にその手を振り下ろした。
乾いた平手打ちの音が二発、森に響く。優華の顔は左右に大きく振られ、被っていた制帽が頭の上でずれた。優華ががくっと頭を垂れるとその制帽はぽろっと頭からこぼれた。
優華の両頬がひりひりと平手打ち特有の痺れにも似た痛みで覆われる。野村はだだをこねる子供のようにさらに腕を振るおうとした。
「おっと待て」
だがその手を松永が掴んだ。
――この人達にも良心がある。
優華は自分を虐待しようとした野村の手を抑えた松永に一瞬だがそんな淡い期待を抱いてしまった。
「あんまり殴ると傷が付く。ここは……」
松永は野村に何やら耳打ちをすると優華の頭から落ちた制帽を手にし、再び優華の頭に被せてぽんと野村の肩を叩いた。野村の顔からむっとした不機嫌さは消え、にたっと粘着質の笑みが浮かんでいた。
「へへ……」
野村は口を真一文字にした優華の顔に自分の顔を近付けるとその厚い唇を優華の弾力のある魅力的な唇に押し付けた。
ピチャ、クチャ。
そして野村は優華の唇やその周りを飼主にじゃれる大型犬のように舐め始めた。野村の優華の顔を舐める音が彼女の耳に届いた。さらに野村の荒い鼻息も彼女の顔にかかった。
(うう……が、我慢よ優華……少しでも口を開けたら……)
優華は自分の顔を舐められる平手打ちよりも痛く、屈辱的な仕打ちに顔をしかめ、野村から顔を背けさせた。しかし背けた先でも野村は優華の顔を舐め続けた。
「そんな顔をするなよ、婦警さん」
その時、野村の様子を見ていた吉田がふざけた口調でそう言った。そして、
「一緒に楽しもうぜ!」
吉田は優華の紺色の制服で一番膨らんだ場所、バストの左を制服の上から鷲掴みをするように掴んだ。
「きゃっ……んんんっ!」
反射的に優華が胸の嫌悪感に悲鳴を上げたその瞬間、僅かに開いた口に野村の口が重なり合った。
そして野村は優華の僅かに開いた口の中身を吸い出すように息を吸った。
「んんんんんんんんんっ!」
優華の頬が口の中の空気を吸われた事でへこみ、口の中では舌が野村の口内に吸い出されていた。自分の舌が無理矢理自分の唇の外に引き摺り出された事に優華の頭の中は動揺で真っ白になった。
一瞬、抵抗がやんだ優華に対して野村は自分の口の中に入ってきた優華の舌を自分の舌で絡むように舐めた。
「んんっ! んんんんっ!」
優華は「やめて!」と言っているようだが口を塞がれて何を言っているのかわからない。
「口の中に物を入れて喋るははしたないよ、婦警さん……」
優華の胸を掴んだり撫でたりしながら吉田がふざけた調子でそう言うとぐっと制服の上から優華の胸を掴んだ。
「なあ、この婦警の胸、なかなか大きいぞ」
そして優華の舌を弄ぶ野村にそう言うと彼はやっと優華の口を解放して吉田の方を見た。
「ほ、本当か」
「ああ。やっぱ、婦警って体を鍛えてるから育ちがいいんだ」
へへっと軽く笑いながら吉田が言った。その頃優華は真一文字に結んでいた口を半端に力なく開けて口の中に入れられた野村の吐気を出そうとするように荒れた呼吸をしていた。
「はあはあはあはあ……も、もうやめなさい……私は……警察官よ……」
胸をいじくる吉田に荒れた息の合間からやめるように警察官としての命令を口にしたがそれには今までのような鋭さや威圧しようとする圧力感はない。
三人の、しかも罪を犯すような男に誰の侵入も許していなかった自分の唇や口を蹂躙されてどうしようもないほどに膨らんだ屈辱感や絶望感に打ちひしがれたのだ。
無論そんな弱々しい優華の注意に吉田や野村は耳を貸すはずもない。
「お、本当だ……結構いい胸しているな……」
吉田に言われた野村も右胸を制服の上から撫で、掴み始めた。
唇だけでなく、胸まで。
女性の自尊心が集中する場所を、しかも正義と誇りの象徴である紺色の制服の上から踏みにじっている。そしてそれに対して何の抵抗も出来ない婦人警官の自分。
優華はそう考えると屈辱と悔しさで両目に涙が溢れ出し、スッとこぼれた。
「……泣いてるのか? 婦警さん」
そんな一瞬を逃さまいと前田がデジカメのシャッターを切っていた。優華は涙が一筋こぼれる顔を前田の方に向けた。
「さ、撮影を……今すぐやめなさい…………」
言葉では命令しているが涙で濡れる目は哀願しているようであった。前田は健気にもまだ婦人警官として自分に命令する優華に可愛らしさを感じていた。
「まあ、そう言うな。いい写真ができるんだから……もう少しぐっと胸を撫でまわせ」
わざとまるで意に介さない態度を取りながら前田は適度に野村と吉田に指示を与えながらシャッターを切り続けた。
「そうそう、へへっ、いいぞ」
優華の膨らんだ胸の形を崩すように制服の上から撫で回す野村と吉田の様子をまるでなにかの見世物を見るかのように煽りながら松永が見ていた。優華は前田がダメならばと今度は松永を見た。
「い、今すぐやめさせなさい……警察官を襲撃するなんて……バカな真似は……」
「どうかな」
松永はふっと小さく笑うと制服越しに胸を責められ屈辱感で心を乱して息も乱す優華に耳打ちをするように呟いた。
「最近……こいつら溜まってるんだよ。だから止めろって言っても多分止めねーぜ。お前らがうろうろするようになって、女とできなくなったからよお」
「……!」
優華は涙でまだ潤む目を一瞬はっとさせて松永を見た。そんな驚きの表情を見せた優華をへへっと悪戯っぽく笑いながら松永は見た。
「婦警さんがこれからどんな目にあっても、それはお前ら警察のせいだからな……今までの鬱憤を婦警さんで晴らさせてもらうぜ!」
「そ……そんな! あなた達が連続レイプ……」
優華が言葉を続けようとしたその時、上着のボタンを野村と吉田が外し始めた。
「い……いやっ! やめなさい! やめなさいっ!」
優華は首を左右に激しく振り、必死に拒絶を体で示した。だが、そんな優華の拒絶反応も野村と吉田にとっては興奮をさらに強める香辛料。二人の手が止まる事はなかった。
あっという間に上着のボタンを外すとその下のシャツのボタンも一つずつ外し始めた。
「いやっ! いやあっ!」
初めて優華の顔に恐怖の感情が宿った。今までは悔しさや屈辱で表情が歪んでいたが、男達にレイプされると具体的な恐怖が目に見えるようになり警察官である前に一人の女性として男達に恐怖を感じるようになったのだ。
なにより。優華は今まで誰にも男に体を許してはいない。未知の恐怖に優華の心は激しく震え、かき乱れた。
金切り声のような悲鳴を上げる優華を前田は冷静にデジカメに収めていた。そしてファインダー越しに制服を一枚一枚剥ぎ取られようとする優華を見ながらどうしようもない興奮を感じるようになっていた。
今まで「やめなさい」と警察官らしく命令していた優華が今は普通の女性同様に恐怖で顔を歪ませて悲鳴を上げている。
制服を着ていても婦警はただの女。ちょっと付加価値がついているだけ。
前田はそう思っていたが、今目の前で展開される光景に彼はその付加価値がとてつもなく大きく、そして惜しく思えた。
(……ヤルだけヤッてポイは……勿体無いな……)
そんな事を思っていたその時、優華のシャツのボタンがネクタイの結び目の真下にある第一ボタン以外がすべて外された。吉田はシャツの袂を掴むとばっとそれを勢いよく左右に広げた。
「やああっ! ……ああ……」
シャツが左右に開くと唇同様弾力のある若々しい肌にCカップ程度の胸が男達に曝け出された。その胸は白いレースをあしらったブラが優しく覆われている。
「やっぱりこうでなきゃ!」
「し、白のブラ!」
吉田と野村は婦警の胸を納める白のブラを見てさらに興奮しながらそのカップを鷲掴みにした。
「い、いやっ! やめ……やめっ……!」
優華の口からはさっきまで出ていたやめるように命令する言葉は出てこなかった。
これ以上命令をしたらさらに男達を刺激して、本当にレイプされる。
ぐちゃぐちゃに男達によってかき乱された頭の中で優華は精一杯考えてそう思っていた。しかし、やめてと犯罪者に哀願をするのは警察官である優華にとってこの上ない屈辱。
警察官のプライドか自分の体か。優華の頭の中で凄まじい葛藤が繰り広げられ、そんな半端な言葉しか口をつかなかった。
だが、何も言わなければ男達に歯止めはかからない。
あっという間に吉田が左の、野村が右のブラのカップをそれぞれ鷲掴みにすると優華の乳房のアンダーまで引き下ろした。
「いやあっ!」
優華の悲鳴と共に形のいい二つの乳房が曝け出された。美しくふくよかな曲線で形作られた二つの乳房にその先端には薄いピンク色をした乳首がついている。優華のバストを目の当たりにした野村、吉田、そして松永の三人は思わず生唾を飲み込んだ。
「う、美味そうだ……」
「……本当にいいのか……婦警の胸だぜ……」
「しまったなあ〜。先に俺と前田さんで先に食えばよかった」
男三人の視線を自分の胸に集中させられた優華の目から再び涙がこぼれ、すすり泣きを始めた。今度は悔しさではなく、未知の恐怖と恥ずかしさの現われであった。
「……くすん……み……見ない……で……もう……もう……やめ……て……」
優華の口からはすすり泣く声と共にその合間に小さく弱々しい言葉が続いた。さっきまで出ていた強い命令調の言葉は消え去り,ためらいがちに哀願の言葉がぽつりぽりつと出てきていた。
松永はそんな優華ににやっと下世話な笑みを浮かべた。
「へへっ……やっと大人しくなったな……でも、もう遅いぜ。そんなんになっちまって、こっちも収まりがつかねえし」
松永ははだけたシャツと上着を引っ掴むと涙に濡れる優華の顔を見るようにしゃがみ、ふざけた調子で言った。
頭の制帽とスカートと脚元のロングブーツがきちっと警察官らしくしっかりとしているのに対して上着、シャツ、そしてブラがはだけ、曝け出されている乳房。
婦人警察官を示す制服が上半分だけとは言え無残にも崩され、その中にいる一人の女性、久保寺優華が曝け出されている。
そんな優華の危機的な状況を松永は楽しむように軽く笑うと、優華の制帽をグッと掴み、顔を自分の方に向けさせた。
「やっぱり婦警って言ってもOLや女子高生みたいにただの女だな」
「う……うう……」
松永がぐさっと心に突き刺さるような一言を優華にぶつけた。その言葉に彼女は何も返事ができず、ただすすり泣くしか出来なかった。
取り締まるべき自分がこんな辱めを受ける。本当はこんな状況でもこの男達を逮捕する手だてを考えねばならないのに、自分はただ止めるように言う、いや、願うしかない。
自分も本当は警察官に守られるべきただの女。婦人警官としての自覚や意識が強かった優華にはその言葉は余りにも重く、そして痛い物であった。
「……どうして……」
優華がポツッとそう言ったその時、松永はぱっと優華の頭から手を離し、すくと立ち上がった。
「もう我慢できねえだろ」
そう言ってさっと優華を指差しながら離れたのと同時に我慢できんと言いたげに野村と吉田の二人が自分の目の前にある豊かな乳房に貪りついた。吉田と野村はそれぞれ張りのある乳房を揉みくだすように揉みながら薄いピンク色の乳首を自分の口の中に入れてそれを舌で転がしたり軽く噛んだりと美味しそうに堪能し始めた。
チュッ、ピチャッ。
乳首を舐め、吸う二人の口からその音が漏れてくる。
「う……うう……や……やめて…………」
聞きたくない音を耳にしながら、そして全身を走る悪寒や乳首から流れる気持ち悪さを伴ったくすぐったさに痛みを感じながら優華は涙をこぼしながらそう言うしかなかった。
「で、でも……段々固くなって、立ってきたぞ……乳首……」
乳首の敏感な反応を野村の大きな口の中にある大きな舌が感じ取り、丸くごつごつした顔を緩めて優華の顔を見上げなら言った。
「『やめて』って言っても体は喜んでるんだよ!」
同じように舌が優華の乳首の変化を感じ取った吉田が狐のような狡猾そうな目を細めて細面の顔を僅かに赤くして言った。
「…………そ、それは……あなた達が…………こんな事をしてる……から……喜んでなんて……」
嫌悪感で吐き気にも似た感覚を覚えながら優華は何かに耐えるように目をキュッと閉じ、途切れ途切れにまだ僅かに警察官としてのプライドが現われているような調子で言った。
そんな優華を前田は記録を残そうとするように様々なアングルから様々な物に対して何度もシャッターを押していた。
きちっと制帽をかぶった優華の涙で濡れる哀願するような目、はだけた制服に貪り付く男二人、時折ぴくっと動く足元の黒のロングブーツ、男の手で形が崩される乳房……。
「随分、熱心だなあ」
そんな前田を松永がにやついた笑みを浮かべながら見ていた。前田は一旦、ファインダーから顔を離すとちらっと松永を見た。
「今までとは違うからな……OLや女子高生とは」
「まあな……俺もなんだか……」
前田がふと松永の股間に目をやるとズボンの下からでもそれが怒張しているのがわかるほど膨らんでいた。前田はふっと笑った。
「お前、さっき『ただの女』って言ってたよな」
「ああ」
「この久保寺優華は『ただの女』じゃない。『ただの女』じゃお前も野村も吉田もそして俺もこんなには興奮しないだろ」
「じゃあ『ただの女』じゃねえとすると……」
松永がそう言ったその時、
「も、もう我慢が出来ない!」
「ひっ! いやっ! いやあああっ!」
何か展開に変化があったか、不意に優華が引きつったような悲鳴を上げた。松永は慌ててその方を向き、前田は悲鳴を上げる優華の表情を取ろうとデジカメを彼女の方に向けてファインダーに再び顔を近付けさせた。
そして自分の方を向いていない松永に返事をするように前田がポツリと呟いた。
「婦人警官、だ」