終章


 

(……どうして……)

 優華は木にもたれかかって虚空を望みながら精液塗れの顔、体、下半身、制服、制帽を冬の冷たい風にさらして心の中で呟いた。

 監禁されている老婆を救う為に? 男達に凌辱されている間、優華は自分に言い聞かせるようにそう思っていた。

 しかし、なぜ自分がここまで酷い目に合わねばならないのか。

 ファーストキスを奪われ、男の肉棒をしゃぶらされ、男達の前で排泄までさせられた。処女を奪われ、それ以降はまるでおもちゃで遊ぶようにさらに弄ばれ続けた。

 話に聞いていたレイプ事件よりも自分は明かに酷い目にあっている。


「なぜ……私だけ……」


 もう一つそう呟いたその時、優華のそばに前田がすっかり冷めたような普段通りの表情で彼女の目線に高さを合わせるようにしゃがんだ。そしてそっと優華の力の抜けた足を掴んでそれを左右に開かせた。


「……まだ……何か…………するの……?」


 最早抵抗する力もなく、容易に足を開かせられた優華が弱々しく怯えた調子で前田に訊く。前田はちらっと優華の光を失い、力も入っていない目を見た。


「婦警さん、俺達の子供、生みたいか?」

「い……いやあ……そんなの……」

「じゃあ、黙ってろ」


 弱々しく優華が首を横に振ると前田は彼女を制するようにそう言い、スボンから自分の肉棒を取り出した。肉棒はそれほどいきり立ってはいないがそれなりに固くなっている。

 前田は木をささえにして優華のヒップを抱えるようにして持って立ち上がった。そして四人の男が挿入し、優華の鮮血と愛液、男達の精液でぐちゃぐちゃに荒らされた優華の性器に己の肉棒をまた挿入した。

 肉棒は優華の性器についた様々な液によって用意にその中に受け入れられた。


「…………」


 自分の中に挿入されても優華は悲鳴すら上げない。嫌悪感を示すように目を閉じ、がくっと頭を垂れるだけだった。


「婦警さんの中、洗ってやるよ」


 前田は向かい合って自分の顔に迫っている優華の耳元にそう囁くと、自分の下腹部に僅かに力を入れた。

 シャアアアア……


「!」


 前田の言葉の後、優華の中に生暖かい液体が勢いよく注入された。優華はその瞬間、はっと目を見開き、慌てて前田を見た。


「な……何を……」

「ションベン。婦警さんの中の精液をこれで流してやるんだ」

「…………」


 優華はこれ以上ない凌辱、屈辱に言葉を失った。

 自分の下腹部が次第に張り始め、子宮内に前田の小便が満ちていくのが分かりたくはないが分かってしまう。優華は力の抜けた首を気だるそうに横に振った。


「あ……ああ……」


 吐息のような声が優華の口から漏れる。それと共に子宮が膨れ上がり、女性器と肉棒の間から黄色く生暖かい液体が漏れ、優華の太腿を伝わった。


「……っつ……」


 ぶるっと前田の肩が不意に震える。前田はふうと一つ息を優華の顔に吹きかけると肉棒を優華から引き抜いた。

 前田の肉棒が抜かれると蓋が外れた瓶のように優華の女性器から前田の小便が流れ出た。前田の手を離れた優華は木に寄りかかって立ち、自分の子宮から前田の小便を垂れ流し続けた。


「結構出しましたねえ」

「たくさん出した方がよく洗えるしな。お前、この婦警さんとの子供、作りたいか?」


 冗談っぽく前田が訊くと松永はにやつきながらうーんと少し考える素振りを見せ、絶望的な表情を浮べて自分の体内から他人の小便を流す優華の顔を見た。


「うーん、この婦警さんだったらいいかなあ〜……」

「…………どうして……」


 前田と松永がそんな事を話しているとポツリと優華がそう呟いた。その呟きは二人の耳に入り、優華の顔に視線を注目させた。前田はそっと優華に近付いた。


「何がどうして?」

「……どうして……私をこんなに…………こんなに酷い目にあわせるの…………」

「酷い目ってどんな?」


 前田は悪戯っぽく聞き返した。優華は一瞬ためらうように言葉を詰まらせたがすぐに恥ずかしそうに口を開いた。


「か…………浣腸……とか…………毛を剃るとか……お、おしっこ…………とか…………あ、あなた達のレイプ事件…………こんな事まで……していなかった……でしょ?」

「浣腸は時々やってたよなあ、松永」

「ああ。便秘の女をする時には」


 さらっと軽い調子で前田と松永はそう言いあった。前田は言葉を交し合うとふっと笑い、そっと優華の制帽を撫でた。


「しかしまあ、確かに俺も他の三人も普段以上に燃えたよ。それは……」


 そこまで言うと言葉を切り、前田はくっと優華の制帽を掴み、もう一方の手で顎を持って顔を自分の方に上げさせた。


「あなたが婦人警官だからさ」

「そんな……私が……警察官……だから……?」


 優華は警察官に自ら望んでなった物。そのせいで受けなくてもいい凌辱を受ける事になったと言うのだ。

 普通のOLだったらレイプがされてもここまで酷い目にはあわなかった。

 ふと優華は婦人警官になった事を後悔した。

 前田は優華の愕然とする顔を見てふっと軽く笑いささやくようにして言葉を続けた。


「まあ、婦警さんも運が悪い所があるよ。その制服、スチュワーデスみたいな制帽、足のロングブーツ……ヤリたくなる格好だし。それに、警察っていつも正義面してるからむかつく所もある……でも、一番は……」

 そこまで言うと前田は制帽を掴んでいた手を優華の頬に伸ばしそっとそれを撫でた。


「そのかわいい顔。婦警さんがブサイクだったらこんなには……」

「前田さん、松永さん」


 そんな時、どこかに行っていた野村と吉田がやって来た。前田はやって来た二人の方を一瞥してその表情を見た。


「ちゃんとやったか?」

「はい、言われた通りに」

「か、簡単なんだな……あ、これ、言われた物」


 野村は前田にコンビニの袋を手渡した。前田はそれを受け取ると中身を確認した。


「……ご苦労さん。さて、婦警さん。お帰りの準備だ」

「帰り……解放……してくれるの?」


 優華は半信半疑でそう訊いた。このまま永遠にこの時間が続くのでは、と心のどこかに諦めの入った絶望が起きていた。

 前田はこくっと頷くとコンビニの袋から物を取り出しながら一つ頷いた。


「ああ。でも、その格好じゃ帰れないだろ?」


 今の優華の格好。

 制帽と右足のブーツ以外はいつもとは明らかに違う。両手は後ろ手に手錠で拘束されたまま、紺色の上着とその下のシャツのボタンと言うボタンは全て外され、ブラから左右の乳房は剥き出しのまま。その上には緩められたネクタイが空しく下がっている。スカートは剥ぎ取られ、パンティとパンストは下ろされていた。

 婦人警官の色合いを残したまま裸同然にさせられ、その上に顔や胸、下腹部、太腿、制服、制帽、ブーツと優華の身に纏う全てに白濁した精液がかけられている。さらに性器からは野村の小便がまだ少量だが太腿を伝わって流れ出ていた。

 確かに私は今レイプされた婦人警官ですと言わんばかりの格好である。

 前田はコンビニの袋からトイレットペーパーを取り出し、それを他の三人に一ロールずつ手渡した。


「婦警さんの体、これで拭いてやろう。胸も、アソコも制服もな」

「へーい」


 四人はそれぞれトイレットペーパーを手に巻き取ると優華の体を拭い始めた。

 体を拭くくらい、自分で出来る。

 優華はそう思ったが、手錠を嵌められたままでは何も出来ないためにやめてと言う訳にも行かず、体を通るくすぐったさや時折乳首や性器と言う微妙な所を拭われる嫌悪感に耐えながら黙って自分の体を拭かれ続けた。

 四人は優華の体を丁寧に隅々まで拭いていった。その手付きや丁寧さは優華との惜別を惜しむかのようであった。

 そしてしばらくすると顔や胸、腹、足、下腹部、ヒップ、さらに制服、制帽、ブーツまで優華や男の体液が全て拭い取られた。


「婦警さん、これはいるか?」


 次に前田が取り出したのはパンスト。ふと優華が自分の膝に下ろされているパンストを見るとさっきの前田の小便で濡れていた。前田はフッと小さく笑うと続けた。


「まあ、パンティは濡れたままで我慢してくれ。どうせスカートに隠れるんだからな」

「……別に……スカートとブーツで大部分は隠れるから……」

「そうだな」


 前田はパンストを袋に戻した。そしてちらっと野村と吉田に視線を送った。

 二人はその辺に放ってある優華のスカートやショルダーバッグ、左足のブーツを拾い上げて優華の下に持ってきた。


「穿かせてやるよ」


 そう前田が言うと優華の左足を持ち上げて濡れている白いパンティにゆっくりとその足を通してすっと下腹部に引き上げた。さらに同じようにパンストを足に通して普段通りに穿かせると、さらにロングブーツをその膝下に嵌めさせた。


「次はシャツだ」


 前田は露になった乳房を隠すようにバストのアンダーに下ろされたブラのカップを上げた。カップの曲線が優華の乳房のカーブにぴったりはまる。そして左右に肌蹴たシャツを合わせ、ボタンを一つずつかけると、ネクタイをキュッと締めた。

 少しずつ、男の手によって優華がレイプの被害者から婦人警官へと変わって行く。

 肌が露出した部分が減ってゆくのに優華はなぜか恥ずかしさを感じていた。


「あ、あの……手錠を外して……自分で出来るから……」

「手錠は最後。油断出来ないからな。スカートを穿かせるから、足を動かして」


 反撃をしたり暴れたりする事はない、そんな気力は等に尽きている事は前田には分かっていたが悪戯っぽく笑ってそう言った。そう言いながら前田の手は止まらずに優華に着せ替え人形のように制服を着せていった。

 スカートを優華の両足から腰へと上げ、きゅっとベルトを腰の部分で締めさせると上着のボタンをかけた。


「できた」


 後ろ手に拘束されているのを除いて優華は完璧に婦人警官に戻った。松永はそれを見るとへへッと笑った。


「さっきまでウンコ垂れ流したり、チンポしゃぶったりしてたのになあ……」

「や、やめて……!」


 松永の言葉に優華は彼から顔を背けた。警察官の制服を身につけ、失った警察官の自尊心や使命感が再び湧いて来たのであろうか。

 前田はうんと頷くとそっと優華の二の腕を腕組し合うように掴んだ。


「さて、行きましょうか」

「ま、待って」


 優華は横に立った前田を横目で見た。


「高橋さんは……解放するんでしょうね」

「……さっき野村と吉田はただ買い物に行ってた訳じゃないから」


 そう言った前田の口元に白い歯がこぼれた。

 それから前田、松永、野村、吉田、そして優華の五人は林から再び山道に出て前田と松永と優華はワゴン車、野村と吉田は原付にそれぞれ乗った。


「それじゃ、前田さん、松永さん。今日は楽しかったですよ!」

「ま、また何かあったら」

「ああ、考えとくよ」


 野村と吉田の二人は軽くそう言い合うと原付を街の方へと走らせた。その後姿を見送った前田はふうと一つ溜息をついて運転席の松永に視線を送った。


「さて、婦警さんを送ろうか」

「へーい」


 松永は車のエンジンをかけるとゆっくりと車を街に向かって走らせ始めた。

 その道すがら優華は前田と松永に視線を合わせまいとするようにじっと窓の外を見ていた。前田はそんな優華の隣に座り、持っているデジカメを見つめた。


「くれぐれも言っておきますけど……ばらしたらどうなるかは……」

「それを公開……するんでしょ?」

「別に公開してもいいって言いましたよねえ」


 前田の言葉に優華ははっとした。足を閉じて抵抗した時、優華の口から強がりを多く含んでそんな言葉が出てきていた。彼女はそれを思いだし、顔を赤く染めた。


「あ、あれは……」

「わかってますって。時と場合によって婦警さんでも嘘はつかないといけませんしね」


 前田はそう言うとにやっと笑った。その笑顔を優華はなぜか気味の悪い物のように見て、慌てて視線を含めて顔を彼から背けた。


「……でも」


 顔を背けた優華がふと心配そうにポツリと呟いた。


「何か?」

「いくら巡回でもこんなに時間をかけるのは……おかしいって見られて……」


 車内の時計を見ると既に時刻は午後四時を回っていた。昼に署から巡回に出たにしては帰って来るのが余りにも遅すぎる。しかし、前田は余裕の笑みを浮かべたままで優華を横目で見た。


「なあに。最後の婆さんの家で話し込んでましたって言えばいいんだ。一人暮しで寂しいって言われてって理由をつけてな」

「無理よ……最後の家、高橋さんに確認を取ったらそんな事……」

「大丈夫。婦警さんが不利になる事はないようにしてありますよ」


 前田の笑みにはどこまでも余裕がある。優華にはその余裕がなんなのか分からなかった。


 

 車は警察署のそばにある路地裏に止まった。そこで始めて前田は優華の手錠を外した。


「この街で、いや地球上で婦警さんをレイプしたって事を知っているのは婦警さんを含めて五人だけ。別に他人の目を意識する必要はないですよ」


 手錠を外され、手首に残されたその跡を撫でながら優華はこくっと一つ頷いた。


「じゃ、これ」


 さらに前田は優華に支給品のショルダーバッグと外した手錠を手渡した。優華はそれを受け取るとベルトにあるホルスターに仕舞い、ショルダーバッグを肩にかけた。

 そして黙ったまま、ふてくされたように優華はワゴン車のスライドドアに手をかけた。


「また、お会いしましょう」


 外に出ようとした優華に前田がかけた言葉に優華ははっとし、慌てて振り返った。前田の手にはデジカメと携帯電話があった。

 優華のショルダーバッグの中には彼女の携帯電話がある。恐らく、気を失った時にそのメモリや電話番号を写し取られたのであろう。優華の顔色がさっと退いた。


「もういいでしょ! これ以上私を……」

「携帯電話の番号を変えたら公開しますよ」

「…………!」


 優華は言葉を失った。

 このまま婦人警官の私をいたぶり続ける気だ。

 優華は愕然とした表情を見せた。前田は笑ったまま、ポケットをまさぐった。


「婦警さんとはいつまでもお付き合いしたいですしね……またメールを送りますよ……あ、そうそう、これもお返しします」


 そう言いながら前田は優華に黒い物を手渡した。

 それは優華の警察手帳だった。


 

「……そうか、寂しいと言われて一緒にいたのか」

 警察署の地域課の部屋に優華が戻るとやはり時間がかかった事を訊かれた。
 優華は前田に言われた通りの答えを返すと、彼女の上司は納得いったような口調でそう言った。


「はい……あの……すみませんでした……」

「いやいや。地域住民に愛されてこその警察。そう言う木目細かい対応が全ての一歩なんだ。気にする事はない」

「……はい、失礼します」


 嘘をついたにも関わらずその嘘を誉められた。優華は心苦しさを感じつつ、本当の事を言えない苦しさを抱えて上司の席を離れた。

 とぼとぼ歩く優華の後ろ姿を見ながら上司は小首を傾げた。


「なんであんなに気にするんだ?」

「優華って真面目ですからね」


 そんな上司の下に優華とは違う婦人警官が書類を持ってやって来た。彼女は軽く笑って席についた優華を見た。


「いい意味でも悪い意味でも真面目過ぎるんですよね……もう少し大らかになれればいいんですけど」

「そうだな。この事でももっとよく思えばいいんだしな」


 二人がそんな事を話していると不意に上司の机の上にある電話が鳴った。


「はい、地域課……はい、はい……わかりました」


 手早くメモを取りながら上司は電話の対応をし、受話器を戻すと部屋にいる警官達を一瞥した。


「みんな、殺人事件だ! 現場は添川三丁目の高橋ウメさん方。全員周辺の警備に向かってくれ!」

「はい!」


 その場にいた警官が一斉にばらばらと部屋から次々と部屋を出て行った。しかし一人、動こうとしない警官が一人いた。


「三丁目……の高橋……それって…………あのお婆ちゃん……」


 優華だった。優華は顔面を蒼白にさせ、目から輝きを失わせて虚空を見つめた。

 殺人事件の起きた場所。それは優華が最後に行った家であった。

 前田が妙に余裕だった事や優華に言った「大丈夫。婦警さんが不利になる事はないようにしてありますよ」と言う台詞。

 そう言う事だったのか。つまりは優華を婦人警官として前田達に繋ぎ止める為に彼らが老婆を……。


「そ……んな……わた……私の……せい……で…………」

「優華?」


 動かない優華をもう一人の婦警が不審に思い声をかけたその時、突然意識を失い、崩れ落ちるように倒れた。


「優華? 優華っ!」


 倒れた優華の体を婦警は揺らしたが応答はない。上司も慌てて優華の下に飛んできた。


「取り敢えず医務室に連れて行け!」

「はい!」


 婦警は優華を抱え上げると警察署内にある医務室に連れて行った。 


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