−6−
「あっ…………」
彼は黒革に包まれた脚を持ってがばっと伯^に開かせると、しっとり濡れる彼女の秘所に自身の先を向けた。
「……じゃあ……行くよ……」
「う……うん……」
ゆっくりと先端が迫り、彼女の口とキス。
「あんっ」
短い子犬のような声を上げる。彼はゆっくりとゆっくりと自分の腰を彼女の中へと押し込んでいく。
「あふん……んっ……入ってくる……」
体内の肉壁を押し分けて入ってくる彼。それを感じながら彼女はとろんとした目で彼を見る。
彼女に入れる時の彼の顔。それはいつも真剣で真面目な顔。彼女を痛がらせないように気を使っているのかそれとも。
しかし、そんな事はどうだっていい。ただ、遊びで入れている訳じゃない。ブーツを履いた人形を扱っているんじゃない。それだけはわかる。いや、それだけしかわからなくていい。
「あああ……あっ……」
彼が迫る。彼の胸板と彼女の小振りで形のいい乳房とが重なり、彼の鼻先と彼女の鼻先がつん、と繋がる。
「……全部……入ったよ……」
「……うん……暖かい……」
そのままでいたい。
彼女はそう思った。しかし、彼はそのままでいさせてくれない。ゆっくりと腰を持ち上げて軽く引いてすとん、と落ちるように腰を打ちつける。
「あんっ!」
びくっ、と指では感じた事のない衝撃が走る。彼女の子犬の鳴き声のような声が飛んだ。
「行くよ」
彼はそう言うと伯^の左脚を肩に担ぐようにして抱えて腰を強く前後へと動かしだした。
「あんっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
腰が打ちつけられる度に2人の肌が触れ合う音が響き、水たまりを子供が蹴るような音と共につながる隙間から液がこぼれる。
「いいよ……ロングブーツを履いた……ああっ……」
彼は小脇に抱える黒革のニーハイロングブーツの脚を肌に感じながら腰を動かす。強く、強く動かす。
さっきまでの優しさや気遣いのない、荒々しさを感じさせるその動き。ロングブーツがやはり、彼を変える。
「あんっ! あんっ! いいっ! もっと……強くっ!」
彼女はそんな彼の動きに素直に感じていた。痛みも何もない。あるのはつきあがってくる快感、そして彼の愛。
「いい! ああああっ! こ、この前より……いいっ! あん! あん! あん! あああっ!」
「僕も……この前より……やっぱり……」
「あああっ! あんっ!」
「ロングブーツを履いた君が一番だよ! 僕……どうか……なってしまう……」
「あんっ! わ、私ぃ……んあっ!」
彼の腰の動きがさらに強くなり、彼女の両乳房も激しく上下に揺れる。快感の余波を受けたように彼女の黒革の足首や膝も動く。ぎしっ、と革の軋みや艶が浮かぶ。
「ああっ! ど、どうかなるっ! ぼ、僕は……」
「いいよ! おかしくなっても! 私も……私も……あああんっ!」
全身を突き上げる彼。内臓も心も全てが激しく揺れる彼女。彼女は目を閉じて彼を感じていた。
「私もロ、ロングブーツで……ああああっ!」
シーツを握っていた右手がニーハイロングブーツの膝小僧を隠す革を掴む。ぎゅむっと革が鳴き、手にその感触がくっつく。彼が好きな感触。それを共にしながら体も時も共に――。
「あんっ! ああああっ! いい! いいの!
ロングブーツを履いただけでこんな……ああっ!」
彼女は頭の中が真っ白。考えや思いもなく感じる事しかできなくなっていた。
延髄反射のようにつきあがってくる感触にびくびくっと体を震わせ、革を掴み、汗に塗れたロングブーツの中で足首を動かす。それしかできない。
「いいよ! いい! ブーツも君も!」
「ブーツ! いいっ! ブーツがいいの! 私……!」
彼女は殆ど生物的な鳴き声しかだせない。彼も殆ど彼女とブーツのこの世で一番好きで欲求の深い物しか口にできないでいる。
2人は夢中で互いを貪り、全身で味わっていた。
そこには何の疑いもない。互いを信じあい、互いを求め合う男女の姿がある。
「あああっ! いっ! お、おかしく! おかしくなるぅっ! ブ、ブーツでロングブーツでええっ!」
「ぼ、僕も! 僕も!」
「一緒に……一緒にぃ!」
「うん! いつでも……僕と一緒だよっ! あっ、あうあっ! い、イクっ!」
「あっ! あっ! あっ! あっ! ああああああっ! あああああああああっ!」
2人の鳴き声が重なる瞬間、彼はすぐさま自分を引き抜いてその先端を黒革に向けた。
ぷしゃあ! と破裂音のような音が響いたと思うとおびただしい白濁液が噴出し、黒革の脚を染めていく。
「ああ……ああああ……」
「あっ……あはあ……はあはあはあ……」
一波、二波、三波と次々白濁液が噴出し、膝小僧から脛へ垂れ、ぴんと張った脹脛にべっとりとまとわりつき、足首の皺沿いに川を作り、つん、と尖ったつま先や甲に溜まりを作る。
白濁に塗れた黒革のニーハイロングブーツ。彼と彼女の芸術作品が今、できあがった。
「はあ……はあ……」
彼女はぐったりとして深く、荒く息を繰り返す。彼も噴出しが止まると彼女の顔の脇にぺたん、と横になった。
「……すごく……よかったよ……」
こくん、と頷く彼女。口の際からはヨダレが一筋、こぼれている。
「……ブーツを履こうが履こうまいが……ね。でも履いた君が一番きれいだし……一番輝いているよ」
彼女は何も反応がない。しかし、荒い息の中で僅かに小さく笑った。
「……好きだよ……大好きだ……こんなにもロングブーツを履いて綺麗になる君が誰よりも大好きだ……絶対に君を離さないよ……安心、してくれたかな……?」
彼が囁く。
彼女はこくん、とはっきりと頷いた。
それからの彼女は。
「……今日はニーハイで行こうかな……」
彼とは必ずと言っていいほどロングブーツで会いに行った。
ロングブーツを履いた自分を前にした彼の荒々しさ、激しさ。それを経験すると何度も経験したくなり、求めようと自らロングブーツを履いて彼に向かった。
そして、それだけではない。
「んん……ああ……今週会えないなんて……んっ……あ……」
彼を思って独りで更ける夜。そんな夜にロングブーツを履くと、自然と彼を思い出し、はっきりとその感触を感じて独りで彼との夜を過ごせるようになった。
それもそのはず。
今、彼女の履いているニーハイロングブーツにはおびただしい数の彼が染み込み、幾筋もの跡として刻まれている。常に彼と肌を合わせて夜を過ごしているのだから。
「あんっ! ああああっ!」
甲高い声を響かせ、びくびくっと黒革の脚が震える。
ぱんと張った脹脛に白い筋と彼女の透明な液の筋とが重なり、それを黒革諸共白い蛍光灯が鮮やかに、そして淫らに輝かせていた。
▽前に戻る ▽入口に戻る