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「ん……ん……んん……」

 じゅぷじゅぷとはしたなくも淫靡な音が下半身から漏れてくる。
 僕はベッドの上に仰向けになり、屹立しているそれを放り出している。それを彼女は僕を跨ぐようにして覆い被さりながら口に含み、舌や唇で愛撫している。
 シックスナイン。もちろん、こんなのお互いに初めて。そして、僕がこの体勢をリクエストしたのは、

「……ロングブーツ……」

 僕の顔を挟むようにロングブーツの履かれた足が並ぶからだった。
 僕は彼女のロングブーツの脹脛の部分を撫でたり、匂いを嗅いだり、さらには舐めたりしていた。その度に彼女の口の中の僕がびくっと脈打つ。
 片手でブーツを味わい、そしてもう片手は僕の鼻の先にある彼女の秘所を撫でたりしていた。
 フェラチオに精一杯なのか、まるで見せつけるように僕の鼻の先で揺れている。その上をなぞったり撫でたり。乾いた陰毛の上に指を滑らせて秘所の裂け目に指を入れる。

「んっ!」

 一瞬、彼女フェラチオが止まる。
 僕は彼女の秘所に指を浅く入れてゆっくりとその内側の壁をなぞる様に裂け目沿いに動いた。優しく、ローションでも塗るかのようにそっと、なぞるように。

「ふむん……んん……」

 口に僕を含んだまま、鼻や唇と僕との間から甘い吐息をこぼす。真面目な彼女。もしかしたら、独りで練習なんかもしていたのかもしれない。僕の指の動きには凄く反応がよかった。

「ううん……んん……」

 再びゆっくりと僕を咥えながらピストン運動が始まる。その時、

「うあっ」

 僕の喉の奥から声が漏れた。
 イッたのではない。
 僕が指で彼女の秘所を弄くっているお返しかお礼と言わんばかりにロングブーツの足で僕の頭をきゅっと挟み込んだのだ。彼女の口の中の僕は当然のようにびくっと反応し彼女の喉奥に突き立てんばかりにまた突き上がった。

「んくっ! んふぅ……」

 その反応に彼女は驚いたようだがすぐに労うように先端をぺろっと舐めた。僕の顔をぎゅうぎゅうと黒い革のロングブーツが挟み込む。サイドのジッパーが頬に食い込むがそんな痛みなどどうって事ない。むしろ、匂いが殆どないはずの合皮から彼女の匂いが立ち、それに包まれている方が気持ちいい。
 僕は顔のすぐ横にある彼女の黒革に包まれた彼女の脹脛を撫で、軽く揉んだ。ぎゅうっと革独特の手触りが僕の手を占め、革が擦れる音も心地いい。
 右手と僕自身で彼女の秘所、左手と顔でブーツ。この世の中で好きなものの二つを同時に味わえる。僕はなんて幸せなんだ。これ以上を望めばバチが当たる。
 このまま埋まっていたい。そう思う気持ちもやまやまだが、そのままと言う訳には行くまい。本来のシックスナインをしなきゃ。
 僕はブーツに埋まった顔を上げて鼻先の彼女の秘所に顔を埋めた。そして、指でなぞり回ったその淵を舌先で舐めた。

「んっ!」

 口に僕を含んだままで嬌声を上げる彼女。
 それを聞いた僕は舌を奥へ奥へと、彼女の一番熱い中へと刺し込んでいく。ブーツで顔を挟むように彼女の柔肉が僕の舌を挟む。塩っぽい味と軽い酸味が彼女の熱と共に舌に乗る。
 ちろちろと舌先で細い軌跡の字を書くようにそんな中で舌を動かした。

「ん……んん……」

 ぴくっと体を震わせながら彼女はしゃぶっている口から声を漏らす。僕が彼女の中に舌を入れてそれを動かしても彼女は僕自身を口から離そうとしない。
 僕を喜ばせようと一所懸命になっている。僕は彼女のそんな思いを感じながらそれに答えようと僕も剥き出しの彼女を精一杯に舐めた。
 彼女の口の中で暖かく包み込まれて舐められる僕自身と舐めている彼女自身。くちゃくちゃ、びちゃぴちゃ、ちゅくちゅくとぬめり、湿った物が掻き回される時の音が静かな部屋の中で響き続ける。
 もうどれだけシックスナインを続けているのか。お互いにテクニカルな面は未熟なせいか、いつしか同じ動きを繰り返している事に、ふと気付いた。
 互いに薄っすら汗をかき、このままではこの体位で消耗して動けなくなるんじゃ。
 そう思った僕はそっと彼女から顔を離した。彼女の秘所はさっきに比べて濡れ具合が強くなっているように見えた。

「ちょっと離れて」

 僕が囁く。すると、彼女はゆっくりとそうっと僕から口を離した。

「……ごめん……下手で……」
「違うんだ」

 下手かどうかはこの際関係ない。それは彼女の唾と僕のヨダレでぐちゃぐちゃに濡れながらびんびんに屹立する僕を見れば言える。
 離れた彼女を僕はさっと体位を入れ替えるようにベッドに仰向けに転がした。

「あ……」

 仰向けになって天井を見上げる彼女。僕はロングブーツに包まれた両足を持ち、M字に開かせるとそれぞれを両肩に乗せるような格好で彼女の足を割いた。再びロングブーツが僕の顔を挟み込むような形になる。

「……入れる……よ……?」

 囁くように言うと彼女は何も言わずに、顔を赤くさせたままでこくんと頷いた。
 僕は屹立した僕の根元を持ち、その先端を彼女に向けるとゆっくり、ロングブーツを肩にしたままで彼女の下の口へと近付けた。
 彼女の口は半開きのような状態で、僕を受け入れるにはちょっと開きが小さいように見える。僕はゆっくりとずっずっと慎重に彼女の口を裂いて行った。

「……痛っ!」

 半ばまで行った頃、急に彼女の眉間に皺が寄ってしかめ面になった。

「あ、大丈夫?」
「うん……大丈夫……気にしないで……」

 彼女はきゅっと目をつぶり、体に入り込んでくる僕に耐えているようにも見える。でも、これを耐えなければ僕と彼女はいつものままで永遠のルーティンが続くだけ。
 彼女の苦しむ顔や耐える顔は見たくない。でも、これが僕ができる彼女への愛情。
 僕は彼女の痛みが一瞬で終わるようにすうっと鼻から息を吸うと一気に腰を彼女に向けて突き出した。

「っつっ――」

 こぼそうとした声を彼女が寸でで止めたような声。その瞬間、僕の肌と彼女の肌が合わさり、同時に繋がったその部分からぬるっと新たな体液の感覚がまとわりついてきた。

「あんっ、あっ、あっ、ああ……」

 壁の消えた彼女。僕はそんな彼女を中から突き上げていた。僕が動く度にそれにあわせるように彼女はベッドのシーツを掴みながら切なそうな表情で、抑えたような声を上げていた。
 僕は夢中で彼女を突きつつ、肩に乗せた彼女のロングブーツの足に頬ずりしたり舐めたりしていた。
 これだけ動いた彼女。汗も書いている所を見ると彼女のブーツの中は彼女の汗があふれ、それを革が吸い込んでいるだろう。
 そうなるとこれはもう彼女の足の一部であり、彼女の肌。そして彼女その物。それでいて、足首が蠢く度に美しい皺を寄らせ淫靡に輝く彼女とは違う、別の生き物のようにも見える。
 ブーツに顔を寄せて荒れた息で匂いをかいでみる。彼女の生物的な匂いと合皮の化学的な匂いが混ざり合った、独特の彼女の匂いがむっと鼻を包み込んだ。
 どんな香水よりも、どんな香料よりも魅力的で僕を発情させる匂い。そんな匂いを感じると僕の動きはさらに早まる。

「あんっあっ……こんなの……ああ……こんなのって……」

 ロングブーツを味わいながらの彼女とのセックス。
 改めて思う。僕は何て幸せなんだ。そして、今までなんでこんな事を避けて来たんだ。この意気地なし。

「……大丈夫? 辛くない?」
「全然! いいよ……こんなに……あんっ! ああ! こうなりたかった……ああっ!」

 切なそうだった顔が次第に緩んで笑顔のような、満足げな物になっているように見えた。
 そんな彼女から視線を僅かに切り、肩のロングブーツに再び頬を抑えつけた。

「ロングブーツ……いい……ブーツを履いたままで……いいよ……」
「ブーツ……私のブーツで……んっ!」

 僕は夢中で彼女を突き、夢中でブーツを貪っていた。ブーツを揉み、舐め、嗅ぐ。
 僕のセックスの相手は彼女の中と足。この2ヶ所と言っても過言ではない。どちらともが僕を占め、僕を発情させていた。

「はあはあ……いい……気持ちいいよ……」
「私も……私もっ、ああっ!」

 彼女は目を閉じて突き上がってくる感触を楽しんでいるようだった。僕が彼女とブーツを貪っているように彼女も僕を貪っている。
 彼女のブーツは僕の唾と汗で外側が濡れ、中も彼女の汗で濡れ、ぐちゃぐちゃになっているようだった。
 その濡れた部分が室内の間接照明にほのかに輝かせ、また、ほのかな香りを立たせて僕の動きを鋭くさせていた。

「あふっ! ああ! あっあっあっああっ!」

 彼女の声は今まで聞いた事のないような声。こう言うのを嬌声というのか、小動物の鳴き声のような、けたたましくも可愛らしい声だった。

「うっ、ああ! いい……いいよう……」

 僕の喉から漏れてくる声もまた、自分でも聞いた事のない声。息切れと歓声を同時に上げているような、喉の奥から漏れるガスのような、そんな声だった。
 そんな声を上げつつ、僕はブーツを抱えて彼女を突いた。

「あんっ! ブーツって……ブーツってこんなあっ!」
「ああ! ブーツ、君の履くブーツが……ブーツを履いた君が……一番僕には……!」

 汗と唾と粘液と。彼女と僕はぐちゃぐちゃに濡れていた。
 もう何が何だかわからない。とにかく僕はブーツを堪能して彼女を突く。彼女はそれを受けて感じる。それを続けていくだけだった。
 延々と続く僕と彼女の貪り合い。しかし、それには限りがあった。

「うう……はあ……」

 柔肉にきゅうきゅうと締め付けられて前後運動をする僕がその奥から何かがこみ上げてくる感覚が湧き起こってきた。
 出そうだ……。
 僕は反射的に思った。しかし、僕は腰の動きをさらに早めた。

「あん! あん! あん! あん!」

 室内犬のような甲高い矯正を挙げる彼女。僕の腰の動きに合わせて声を上げているようだった。

 もう出る!

 僕がそう限界を感じた瞬間、ぬぷっと彼女から僕を引き抜いた。

「あん!」

 彼女の声を聞きながら僕は肩にあったロングブーツの足を降ろし、粘液と彼女の鮮血でふやけているような僕自身をそこに向けて軽くしごいた。

「うあっ! ああっ!」

 喉の奥からこぼれる僕の声と共に僕の中からどぷどぷっと濃く粘り気の相当ある、白濁液が噴き出してきた。そしてそれは彼女が履く黒革のロングブーツの上にまかれた。

「ああ……はあ……」

 大きなため息。僕も彼女も肩で息をしていた。黒革のロングブーツにはおびただしい白濁液が池や流れを作って美しい模様を描いていた。

「……ごめん……ブーツ汚して……」

 僕が言うとうっすら汗ばんだ彼女が僕を見て、ロングブーツにまかれた白濁液に手を伸ばした。

「いいの……拭けば……いいんだし……それに……」

 そう言いながら白濁液の流れを指で止めるようにしてすうっとそれをすくった。

「ブーツを履いた私をこんなにも好きになってくれているんだもん……ブーツも私もとっても……幸せだよ」

 そして指にまとわりつく白濁液をぺろっと悪戯っぽく舐めた。
 
 その後の僕と彼女の仲はさらに深まり、何度もベッドを共にした。
 彼女も友人に胸を張って僕との関係をお喋り出来るようになって、初めての夜の前に比べて明るくなったように見えた。
 彼女に嫌われるんじゃないか、彼女が望んでいないんじゃないか。
 そんな事を思う事はもうない。
 それは僕が彼女を信じているから、それもあるがそれよりももっと目に見えた事がある。

「お待たせ、待った?」

 いつもの時間、いつもの場所で待ち合わせていていると彼女が明るく元気にやって来る。
 その手には大きなバッグが抱えられている時がある。
 ちょうどロングブーツが入るような、そんな大きさのバックを抱えている時、それは彼女が望んでいる時だとわかるからだった。

「……シーズンになったら本革の恰好いいロングブーツ、買ってあげるよ」
「うん……私に似合って喜んでもらえるのがあったらいいなあ……」

 彼女はそう言いながら、大きなバックを抱えつつ、きゅうっと僕の手を繋ぎながら腕にもたれ掛かった。そして、一緒にいつもの街を歩き出した。


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