バックヤード 〜才能に恋して〜

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「ん……んふう……ん……」

 ビールの空き缶、食べつくされた皿、乱雑に置かれた箸、食後の混沌とした状態でテーブルの上が乱れている。

「はあ…………あの……もう……」
「……もう少し……ぎゅっと……望ぅ……」

 スカート、デニムのパンツ、パンスト、ボタンが全て開いたシャツ、ブラ、Tシャツ、トランクス、パンティ、テーブルの下に衣服と言う衣服が乱雑に散らばっている。

「カナ…………僕は……」
「んっ……暖かい……望……もう……望ったら……」

 日ごろの鍛錬で保たれている健康的でスレンダーな体の香苗、男性にしては少々華奢でやや色白の望。ベッドの上で抱き、抱かれ合う男と女の姿。
 
 食事を終えて見つめあっているうちにどちらからともなく身体を寄せ、唇を重ね、身に付けている物を一つずつ外していき、抱き合ったままでベッドに崩れていた。

 それから。
 どれだけ望は香苗と唇を重ね、舌を絡めたか。
 どれだけ望は香苗のボリュームのある乳房に貪り、舌を這わせたか。
 どれだけ望は肌を合わせて強く抱きしめたか。

 そして。
 どれだけ香苗が優しく望に微笑みかけたか。
 どれだけ香苗が望の頭を優しく撫でたか。
 どれだけ香苗が望の名を呼び、その温もりを求めたか。

「カナ……僕……僕……もう……」
「……我慢……できない……? もう……」

 くすっと香苗が笑い、いきり立つ望自身を優しく握る。
 
「こんなになっちゃったんだ……挿入たいの?」
「…………」

 こくん、と恥かしそうに、控えめに望が頷く。
 香苗はもう一つくすっと笑った。

「……ずっとこんなんだったでしょ? 私がここに来た時から」
「…………」
「玄関でキスした時から……もう凄いってわかったもん……」
「…………」

 望は頷きもせずにじっと香苗を見ている。
 その頬は羞恥なのか、興奮の上気なのかほんのりと高潮している。

「ねえ、シャワー浴びてる時……私のブラとかパンツ、触ってたりしてたでしょ……」

 お見通し。そう言いたいような眼差し。
 望はふっと彼女から僅かに視線を逸らした。

「……ごめん」
「謝らなくてもいい……でもね……こうして穿いている本人がすぐそばにいるんだから……ね……」

 くすくすっと悪戯っぽく笑う。
 香苗は優しく握る手をゆっくりと、撫で回すように動かす。

「うっ……」

 びくっ、と望自身が振るえ、彼の表情がぎゅっと締まる。

「可愛い……」

 香苗は笑顔を見せ、望自身を握ったままでその先端を人差し指の腹で撫でた。
 すでにそこはぬるぬるの彼自身のローションに塗れ、そうっと指を上げるとつっ、と糸を引いた。
 
 とくん。

 香苗の胸の奥が強く揺れ、全身が上気する。
 彼女はそっと望から手を離し、ローションがついた指を自分の口に寄せてぺろっと舐めた。

「……いいよ……挿入て……」
「う……うん……」

 香苗の言葉に望の顔が僅かに真顔になる。
 望がゆっくりと腰を上げると香苗もその秘裂を彼に向けた。
 秘裂は熱いくらいに滾り、しっとりと濡らして彼を待つ。

(人の事言えないけど……)

 じんじんと熱を帯びる自分の下腹部に香苗は可笑しさを感じながら静かに目を閉じた。

「……んっ……ああ……」

 再び彼の温もりを感じる。その肌に、そして、自分自身の中に。
 ずぶずぶとゆっくり、しかし、スムーズに確実に彼が彼女に入って行く。

「入ってくる……あっ……望……入ってくる……!」
「……カナ……奥まで行くよ……」
 
 ずぶっ。

 そんな音がしたと思うくらいに望むが強く、香苗に腰を入れた。

「あんっ!」

 香苗が甲高い声を上げた。

「……入ったよ」
「……ゆっくり……動いて……」

 望は一つ頷くとゆるゆると名残惜しそうに腰を浮かせる。

「ああ……」

 彼が抜かれる感触。彼女の中で彼と擦れ合う感触。
 香苗の背中にぞくぞくっと悪寒にも似た快感が走る。
 望自身のカリが彼女の会陰の手前で止まる。

「望ぅ……来て……!」
「…………!」

 ずん、と抜くときとは対照的に一気に望は香苗を突き上げた。

「ああああんっ! そうよ……そう……あんんっ!」

 身体を貫く快感。
 香苗はびくっと全身を震わせてそれを貪った。
 望は香苗の望むように静かに、そして強く動く。

「あんっ! あっ! ああっ! 望ぅぅ!」

 香苗は望が作り出す快感に牝の獣のように叫ぶ。
 ぎゅっと彼に腕を回して抱き込み、彼も彼女を抱きしめながら腰を動かす。

「激しく……もっと強くぅ!」
「うん……あぁあ!」

 望は香苗の声に応えて腰を強く動かす。
 強く引き、強く突く。
 
「あん! あん! あん! あん! ああっ!」
「はあはあ……カナ……カナぁぁ!」

 ぐちゃぐちゃぐちゃと淫らな音がワンルームの部屋に響く。
 ぎしぎしとベッドが軋み、肌が当たりあう乾いた音も連なる。
 さらに香苗の甲高い声と望の荒い息が重なり合い、2人が強く繋がりあっていた。
 
「カナ……カナ……僕は……!」
「いい! いいよっ! 望! 望ぅぅぅ!」

 香苗は乱れに乱れ、望は彼女を乱す。
 婦人警官、そんな頑なで整った姿は今の香苗にはない。
 愛しい男を求める女。制服を着ようが着まいが、婦人警官だろうが普通のOLであろうが変わらないそんな牝としての本能的な姿。
 
「いい! 気持ち……ああああっ! ああああ! 望! 望っ!」
「カナ……僕も気持ちいい……僕……あうああ!」

 望もただの牡となって夢中で腰を振って香苗を突き上げた。
 汗と唾と牡牝の分泌液とでぐちゃぐちゃになりながら2人は求め合った。

「カナ……ぼ、僕もう……」
「まだ……まだよ……私と……!」
「で、でも……僕……うああああ!」

 望の喉の奥から響いてくる声。
 その声が響いた瞬間、香苗の中でばっと熱い物が弾け飛んだ。

「あんっ! ああああ……」

 それを感じた香苗は甲高い声を収めた。

「ああ……ああ……はあ……はあ……」

 香苗の全身を言いようのない弛緩が襲う。
 文字通りに果てた望はそんな香苗に覆いかぶさって優しく抱きしめ、唇を求めた。

「ん……んん……」

 静かに唇を求めあう2人。
 どちらともなくそっと離れると香苗は小さく笑った。

「もう……ちょっと……我慢してほしかったな……ちょっと……足りない……」
「……ごめん」
「いいの……いっぱいエッチをしたらきっとよくなっていくから……これからも一緒に気持ちよく……なるように……ね」

 ふふっと香苗が笑いながらそっと望の手を取った。
 きゅっと強く握り合う2人。

「カナ……」
「望……ぅん……」

 そして、手以上に強く唇を重ねあった。

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