婦人警官 制服の為に ―婦人警官開放―

7 行動


 からん。
 優華の手から剃刀が離され、コンクリートの床の上に落ちた。

「はあはあはあ……」

 瞬きを忘れ、僅かに潤む彼女の視線の先にはM字に開脚された真理子の足。そして、その奥には毛を剃り取られた真理子の血で染まる陰部が外気に剥き出しにされていた。震える手で剃ったせいか、真理子の陰部の周りや下腹部の毛が幾分、剃り残っていた。

「なんかカッコ悪ぃなあ……もうちょっと上手く剃れなかったんか?」

 半端に剃られた真理子の下腹部。松永が思わず苦笑いを見せた。無論、呆然と足を開いたままでいる真理子を前田がデジカメで納めている。何枚か真理子の剃り残りのある陰部を撮るとデジカメをポケットに入れ、しゃがみ込むと床に落ちたT字剃刀を拾い上げた。

「まあ、そう言うな松永。憧れの先輩の毛を剃るんだ。ブルってしまうのも仕方ない……やはりここは……」

 ちらっと真理子の呆然とした顔に視線を流す。

「先輩に手本を見せてもらうか……前に手入れした時から結構経ってるし……ね? 久保寺巡査」
「!」

 黙って優華はびくっと肩を震わせる。そんな怯えた優華に松永が悪乗りするように肩に手をやり、そっと顔を耳元に近付けさせた。

「男がいなくて手入れしてないんだろ? もうぼーぼーじゃねえか? まあ、先輩みたいな剛毛じゃねえけどなあ」
「…………」

 きゅっとした唇を噛み、目を閉じて優華が耐える。
 獣の照準が自分に合い、それが外れるのを待っているようである。

「優華は関係ないでしょ! ……あんなに毛が濃いのは……わ、私くらいなんだし……」
「毛を剃るのに毛深いとかそうじゃないかは関係ないでしょ?」

 薄く笑って前田はT字剃刀の柄を摘んで竹とんぼでもするかのようにくるくる回した。そして、ふとぴたっと回すのを止めるとそっと剃刀の柄を真理子に向けた。

「もっとも、そんなに剛毛でやりマンだったらきっと手入れは慣れてるんでしょ? まだ子供みたいな久保寺巡査にそのテクを教えてあげたら……」
「訳のわからない事言わないで! 私は優華に剃刀を向ける事なんてできない!」
「……そう」

 ふうんと軽く感嘆の息を吐き、剃刀の刃を優華に向けた。

「じゃ、俺達が代わりに向けるか」

 前田が剃刀の先を優華に向けると彼女は僅かに震えた。前田達に剃毛させられる羞恥よりも連中が剃刀を持った事への恐怖が優華の中を先走った。

「ま、待って」

 これ以上優華を危ない目には遭わせられない。真理子は一つ唾を飲みこむとそっと手を前田の方に伸ばした。

「…………」

 前田は何も言わず一つ微笑むと真理子の手に剃刀を置いた。そしてさっと松永に目配せを送ると彼女から離れた。

「へへ……じゃ、優華ちゃん、足を開いて〜」

 しゃがみ込んだままの優華の背後に回ると後から彼女を羽交い締めにするのと同時にスカートを引き上げた。そして下半身のほとんどを捲り上げると彼女のお尻が床に着け、両足を前に投げ出せるように座らせた。
 まだ、優華は怯えているせいか、膝頭同士がくっついている。

「パンストとパンティはセルフで下ろして」
「…………」

 完全に私達をおもちゃにしている。
 僅かに腹立たしさを感じつつ、真理子は剥き出しになったベージュ色のパンストに手を伸ばした。

「……センパイ……」

 か細い声で優華のそんな声が聞こえたような気がしたが、止めればその優華に危害が加わる。断腸の思いで彼女のパンストとパンティに手をかけた。

「……優華、お尻を上げて……」
「…………はい……」

 小さな声でのやり取り。優華は真理子が自分のパンストやパンティを脱がせやすくするように素直に小さくお尻を上げた。
 真理子を見つめる優華の眼差しは後輩を守らずに男の言いなりになって動く先輩に対しての怒りや絶望、ではなく何の感情も持たない、平べったい物だった。
 獣のような男達への恐怖、脱がされている恥ずかしさ、真理子も巻き込んで凌辱される罪悪感、そして欠片ほど残った婦人警官の自尊心を徹底的に踏み躙られた屈辱。
 様々な感情が優華の心を傷付け、表情や目元にそれを表出する事が出来ないようになっていたようだった。
 しかし、それだけではない。
 今まで感じていた物とは別の違った感情が彼女の心の中で大きくなっていた。
 それは優華に事の善悪すら考えさせず、ただそばにいる真理子の姿、それがどんな淫乱な行動でも信じられない行動でも、見つめる事しか許さない、強い感情だった。

 シュッシュシュシュ……

 繊細なパンストが擦れる音が嫌に耳に響く。空っぽの表情を見せる優華の白く若々しい肌に張り付いていたパンストが無数の皺を作りながら彼女の足を滑ってゆく。僅かに開いた膝頭の間をパンストとパンティが通過し、婦人警官の制服とパンストに下着に隠された優華の下半身が露になっていった。

「アソコモロ出しの婦警が二人だ! 風俗でもこんな事ないぞ!」

 下半身を露出した婦人警官が二人、向かい合って地べたに座り下半身を剃毛する。現実とは思えぬこの状況に吉田が下品に笑って言葉を二人に投げつけた。


「……イレギュラーバウンド……か」

 デジカメを優華のそんな顔にズームさせて前田がふと呟いた。

「へ?」

 ぽつっと思い付きで呟いたような前田の言葉に吉田がきょとんとしてその方を見た。前田はそっとデジカメの液晶画面を見るように吉田に目配せをした。

「女は皆突く所を突けば崩れるもんだが……久保寺巡査、こっちが考えた以上に崩れてきているみたいだ」
「崩れてるのは先輩の方でしょ?」

 納得いかなげに吉田が言うと前田はまだまだと言いたげにふっと笑った。

「桜井巡査は元々崩れてる。OLだろうが婦警だろうがヤリマンの女はどっかが崩れてるしな……しかし、久保寺巡査の方は違う。俺達に処女を奪われても婦警の体裁を繕おうとしていた……先輩に一服盛ったのも俺達の言いなりになっているのも全部自分が婦人警官だって言うからだ。どんな目に遭っても婦警のここは崩れていなかった」

 とん、と前田が自分の胸を軽く叩き、そして続けた。

「婦警の久保寺巡査に屈辱を味あわせて……自分から腰を振るような女に堕そうと考えたが……突く場所を間違ったみたいだな」
「なんでそんな事が?」
「この顔を見てみろよ」

 デジカメの液晶画面に優華の顔が浮かぶ。何の感情もなくただぽかーんとパンストとパンティを下ろす先輩真理子を見ているだけだった。

「なんか呆然としてるだけで……」
「いや、この顔は戸惑ってるんだ。欲しい物はある。しかし、それを自分が欲しがっているのは信じられないってな……」

 そう言うと前田はデジカメのシャッターを切り、優華の顔を画面の中に収めた。

「……ま、欲しい物を与えたら……真面目で優秀な婦人警官が俺達、いや世の男全てにとって都合がいい女になるけどな」

 そう言った前田の目がらんと輝き、もう一度デジカメのシャッターを切った。


 シュッシュシュ……

 パンストとパンティが優華の足を滑り降り、ついに膝を越えてロングブーツが包み込む脹脛の上まで来た。優華の下腹部を覆う物は全くなくなり、白い肌に毛足の長い芝生のような柔らかな陰毛が生えそろった下腹部と赤く充血したようなピンク色の陰唇が僅かに覗いていた。

「んじゃ、クリームを……真理子ちゃんが塗ってやれよ」

 優華の陰毛の上にホイップクリームのようなシェービングクリームが乗る。真理子は右手でそっとそれを陰毛の生え際を中心に満遍なく伸ばしていった。

「……はあ」

 真理子の指先が優華の下腹部を撫でると、大きな緊張が僅かに緩和したのか優華口から溜息がこぼれた。

(……ん?)

 その時、ふと優華の下腹部を見た真理子がある事に気づいた。優華の陰唇がきらっと輝いたような気がしたのだ。

(まさか……濡れてる!)

 優華には性欲を掻き立てさせるような事はされていない。まして、真面目で男っ気のない優華がいつも秘所を濡らすような淫乱であるはずもない。
 なぜ。
 一瞬、真理子の頭は混乱の極みに達した。しかし、すぐに冷静になるとシェービングクリームを広げながら冷静に考えた。

「……ねえ、もうちょっとクリームこの辺につけてくれない?」

 そして短い時間考えるとすぐに松永にそう言った。

「へへっ、いいぜ。後輩の毛剃りに積極的だなあ」
「クリームがないと痛いでしょ……優華を痛い目には遭わせたくないから」

 真理子が指示した下腹部の下の方、丘の下り斜面に松永がクリームをつけると彼女はちょいちょいとそれを陰毛に馴染ませていった。そして、その動きに紛らわせて優華の秘所のそばにも少し、クリームをつけた。

(……もし優華が濡れてるなんて分かったら絶対こいつら優華をヤル……クリームで濡れたようにカムフラージュできれば……)

 後輩を守ろうとする先輩の愛情だった。だが、それを持ってしてもなぜ優華の秘所が濡れ始めているのかだけはわからなかった。

 真理子の手で優華の陰毛全てにクリームが塗りつけられると彼女の手にT字剃刀が握られ、その刃先が優華の肌に当てられた。

「……動いちゃダメよ」
「…………」

 真理子の短い言葉に優華は返事どころか頷きもしなかったが、返事代わりにM字に開いた足を真理子が剃りやすいように僅かに大きく開いた。

 ゾリゾリゾリゾリ……

 剃刀を持つ右手に全神経を集中させ、優華の肌を傷付けないように慎重に剃刀を滑らせる。しかし、剃刀の冷たさや特有の緊張感に満ちた存在感に時折びくっ、と優華の体が震えた。

「……我慢して」
「……は……い」

 ゾリゾリゾリ……

 シェービングクリームに塗れた陰毛が剃刀に刈り取られて行く。
 優華のロングブーツに覆われた両足が軽く、震えていた。しかし、膝頭が少々揺れる程度で剃刀が立つ下腹部は余り揺れていない。

「優華ちゃん、怖い?」

 膝頭の震えを見た松永がそっと優華の耳元に囁いた。彼女は弱く首を左右に振った。

「先輩を信じてるんだなあ。実は優華ちゃんと真理子ちゃん、デキてたりして」
「…………」

 優華は何も答えない。一方、真理子も松永の言葉は聞こえていたが、意識的に黙って無視した。
 妙な沈黙の中、真理子の手が忙しく動き、優華の陰毛を徐々に刈り取っていった。

「前田さん、撮ってます?」
「ああ。今バッテリーを交換したばかりだ」

 バッテリーが切れるほど撮っている。一体どれほど撮れば気が済むのかと真理子はわずかにムッとした。しかし、むっとしてもどうする事もできず、ただ黙って剃刀を動かすしかなかった。 

(もう半分か……優華は乾いたかな……)

 真理子はさらにクリームをつけるふりをしてそっと優華の陰唇のそばに指を添えた。

(……!)

 その瞬間、彼女はギョッと驚いた。

(! そんな……どうして……)

 ぬるぬると言うかべとべとと言うか、そんな液体が優華の中から外へとにじみ出ていたのだ。さっきよりもより濡れ、余程興奮しないとここまではいかないと思うくらいにまで濡れていた。
 信じられないと言いたげにそっと視線を優華に向けた。すると優華の戸惑ったような視線とちょうどぶつかった。
 その目は僅かに潤み、自分でもどうしていいのかわからないと訴えるような、物だった。

「ん? どした? 真理子ちゃん」
「い、いや……」

 視線を上げた事に松永が気付いたが、真理子は上手く誤魔化した。
 時間が経てば乾くかと思っていたがますます酷い事に。真理子はどうすればいいかわからないまま、残った優華の半分の陰毛をゆっくり、時間を稼ぐように剃り出した。

(……こいつらがこんなに濡れた優華を見たら……絶対にレイプする……それだけは……でもどうして? 何にそんなに興奮してるの?)

 そんな事を考えながら一心に剃刀を滑らせ続けた。

 ゾリゾリゾリ……

 時間を稼いでその間にいつもの真面目で冷静で貞淑な優華に戻って欲しい。自分みたいな女じゃなく。
 そんな事を念じながらゆっくりと剃り上げていった。
 しかしそんな先輩の愛にも関わらず、優華の残り少なくなった陰毛はあっという間に全て刈り取られた。

「おっ、終わったみてえだな」

 優華の背後から覗き込むように松永が奇麗に剃られたその下腹部をにやつきながら見た。
 真理子は何も言わずに毛の付いた剃刀を手で拭い、それをそっと肌蹴た制服の上着のポケットに仕舞おうとした。

「まだだ」
「えっ」

 不意に前田が声を上げた。その声に真理子は勿論、吉田や松永もきょとんとした表情を見せた。前田は刈り取られた優華の下腹部をデジカメに収めると真理子を見つめた。
 これ以上何を。
 真理子は優華を守りたい一心で自分に視線を向ける前田をきっ、と睨みつけた。

「何を考えてるの?」
「脇は?」
「!」

 勝ち誇ったような前田の笑み。真理子はバカにされてると思いながらもぐっと堪えるように前田を睨み続けた。警察官特有の強い視線にも動じる事はなく、前田は人を小バカにするような笑みを浮かべ続けた。

「そう睨まれても。脇はどうなんだって聞いただけですよ……久保寺巡査が答えられないんなら先輩から確認してもらった方が……」
「ま、前田さんが訊いてるんだ! 答えろよ!」

 何がなんだかわからないが、吉田が呼応するようにはやす。するとさらに優華の背後から羽交い締めする松永も手を動かし始めた。

「どうなんだ? 優華ちゃん」

 松永が制服の袂から手を入れ、優華の胸に手をやりそっと擦るように揉んだ。

「ひゃっ!」

 その手が乳房を覆うように動き、丁度乳首の辺りに行くと小動物の鳴き声のような短い声を上げ、びくんっ、と敏感に反応して震えた。すると松永はなぜか一瞬弄ぶ手を止め、ちらっと前田を見た。
 前田は薄く笑ったまま小さく頷き、真理子を見た。

「脱いでもらうのが一番分かりやすいと思うんですけどねえ。どうです、先輩の手で後輩の制服を……」
「…………」

 前田を睨みながら真理子は黙っていた。
 このままではどう転んでも優華は彼女自身を守る唯一の防具、制服を脱がされその体を蹂躙される。
 それよりなにより、優華自体が性的に興奮を高められすぎて今、松永に軽く胸を触られただけで感じる状態。秘所が濡れている事に気付かれるのも時間の問題であった。
 絶望的。彼女の頭の中でその三文字が浮かんだ。
 真理子はポケットの中で剃刀の柄をぎゅっと握った。

(……このままヤツらの好き勝手に優華をレイプされるよりも……いっそ一か八か……失敗しても優華には……)

 一つの考えがまとまり、心も恐ろしいほどにあっさり整理がついた真理子は前田に恭順するように剃刀の柄をさっと取り出し、優華に再びその先を向けた、その時、

 カッ!

「!」
「な!」
「……」

 片足だけに履かされたブーツの踵の音を立て、真理子は突然剃刀の向きを前田に向けて飛び掛った。
 鍛えられた足腰でのその動きは周囲の男達に止める暇を与えぬ程の速い物だった。
 しかし、真理子はそんな中で前田の表情が変わった事に気付いていなかった。
 まるで方程式の解を見つける手がかりを見出したかのような笑みを。

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