婦人警官 制服の為に ―婦人警官開放―
4 野外
ポケットティッシュをそばに置かれた真理子はきっ、と前田を睨んだ。
「あなた達どこまで……」
「桜井巡査が嫌でも……久保寺巡査のケツを拭きたいって奴は他にいますし」
そう言いながら前田は野村や吉田や松永をさっと見渡した。
真理子がやらないのならこの男達が。そう言いたいようだった。
真理子は悔しそうに顔をしかめるとそばに置かれたポケットティッシュを手にした。
そして、それを開くと中から二枚ほどを引き抜き、洋式便器の上で座らされたままの優華に近付いた。
「……ごめん……優華」
「…………」
優華は返事をせずにただはあはあと口から荒い息を繰り返すだけ。
そんな後輩を前に真理子は可哀想とか惨いと言った感情は不思議と起きなかった。
そう思っても優華は救われない。逆に傷付けてしまうかも。
真理子は与えられた仕事を果す機械のように便器に突き出された彼女の尻を拭った。
シュッ、シュシュッ。
固いティッシュの紙が優華の肛門を擦る。その音だけがトイレに響き、その合間に優華の篭ったような鼻息がこぼれた。
ティッシュが茶色に染まる。
それを捨てて新たなティッシュで彼女の肛門を拭う。
そんな事が数回続き、拭ったティッシュに付着する物がなくなった時、真理子は前田をちらっと見た。
「……終わった」
「よし。じゃ、場所移動だ」
前田が言うとさっと真理子の背後に野村が回った。
「こ、こっち来るんだな」
そしてその腕を掴み、優華から引き離すように引っ張った。
「さてと……便器から降りろ」
吉田は掴んでいる優華の腕を引き、彼女に便器から降りるように促した。
優華は吉田と松永に腕を抱えられたままでブーツを履いた左足から降り、裸足の右足を下ろした。
「前田さん、パンストとブーツ履かせた方がいいんじゃねえ?」
にたっと松永が笑いながら言う。
前田は表情を変えずに、空のブーツを手にすると優華のそばに歩み寄った。
彼は跪くようにしゃがみこむと彼女の左膝で引っかかっているパンティとパンストをゆっきりと穿かせた。
「…………」
優華は何も言わない。目からは光が失せ、まるで着せ替え人形のよう。
何も言わない、自分から何も動かない優華に前田はパンティとパンストを穿かせると、その手触りや質感を堪能するように黒光りするロングブーツをパンストに包まれた優華の足にはめ込んだ。
ブーツは吸い付くように優華のふくらはぎを覆い、黒光りするレザーで包み込む。
前田はブーツに包まれた優華の足を見てフフッと小さく笑うとサイドジッパーをゆっくり上げた。
ジジ……ジジジジジジ……。
ジッパーが上がる音が廃ビルに響く。ジッパーが上まで上がり切るとそばに置いてあるスカートを手にした。
「スカートくらいは自分で穿いて。お人形じゃないんだろ?」
手にしたスカートを優華に差し出すと彼女はそれに手を伸ばし、ブーツを履いたままでスカートを穿いて行った。
再び婦人警察官、久保寺優華巡査が男達の目の前に現れた。
前田は満足げにうんと一つ頷くとすっと真理子の脇を抜けた。
「じゃ、行こうか。松永、吉田しっかり案内しろよ」
「はい」
「へへ……」
前田を先頭に真理子達は荒れ放題の廊下を歩き始めた。
「……どこに行くの?」
野村に捕まれたままで歩く真理子が背中を向ける前田に訊いた。
「すぐそば。きっと、桜井巡査が喜びそうな刺激的な場所ですよ」
顔を向けてはいないが、その顔が緩んでいる事は真理子には容易に読めた。
前田達は廊下を進み、階段まで行くと一歩、階段に足を乗せた。
「……出るんじゃないの?」
真理子は反射的に訊いた。前田は下り階段ではなく上り階段に足を置いていた。
「ええ。この上にあるんですよ」
そう言いながら何の躊躇いもなく階段を上り出し、野村に捕まっている真理子、松永と吉田に捕まる優華も上へと上がり始めた。
暗い階段を一段一段、上へ上へと上がっていく。階段の果てにはフロアはなく、ドアが行く手を遮るように立っていた。
前田はそこにあるドアに手をかけ、ゆっくりと開けた。
「…………っ」
ドアを開けた瞬間、薄暗い階段が不意に明るくなり、暗さに目が慣れていた真理子は思わず目を細めた。
「さ、こっちです」
そう言って前田はドアの外に出て行った。真理子や優華達も前田の後についてドアから外へと出て行った。
「……ここは……」
六人が出た場所。そこは廃ビルの屋上だった。
コンクリートの床の割れ目からは雑草や苔が生え、鉄の手すりも赤く錆びてこのビルが久しく管理されていない事を改めて見る事が出来る。
さらに屋上を冬の冷たい風が吹き抜け、みすぼらしさを際立たせていた。
「さて……と」
前田はさっと振り返って真理子と優華を見た。
「次はここで遊びましょう。野外好きの桜井巡査も喜んで……」
「ふざけないで!」
真理子は眉を吊り上げて前田を睨んだ。
「あたしが喜ぶって……」
「よく周りを見てみてくださいよ」
にやっと笑って前田がそう言い、真理子は辺りを見渡した。
廃ビルの両隣はこのビルよりも一階ほど高く、屋上を見下ろすような形となっていた。そして向かいのビルはこのビルと同じ高さ。
「向かいは屋上に上がれば、隣は最上階に上ればここでしている事が丸見え、って事です。見られた方が……刺激的なんでしょ?」
「でも……見られたらあなた達も……」
「通報はされませんよ」
そう言いながら、前田はゆっくり真理子に歩み寄った。
「婦人警官のレイプ……そんな物を実際に男が目にしたら……どう言う行動を取るか……女のあなたにはわかんないでしょう……」
すぐそばまで歩み寄った前田はその手を彼女の制服の袂からその中に入れた。
「きゃっ! ち、やめ……」
真理子はその手をつかもうと自分の両手を動かそうとした。しかし、何かに縛りつけられたように動かない。
「さ、騒がない方がいいんだな」
いつの間にか野村が彼女の両手首を掴んでいた。
上着の下で前田の手が白いシャツに包まれた右の胸の膨らみの上に乗せられ、ゆっくりとその張りや肉感を楽しむように動き出した。
「絶対に手が出せない婦人警官が男に悶えさせられる……それは見ているだけで興奮するもんです……そんな興奮する物をわざわざ自分の手で止めさせるなんてこと……しないですよ」
「い……や……」
前田は真理子の右の乳房をゆっくりと撫で回した。シャツとブラに覆われた乳房だが、真理子は前田の手の温もりや接触感が素肌に当っているかのように感じていた。
さらに頬を撫でる風に冷たい空気、車の走る音や鳥の声。外でしか感じられない様々な感覚が真理子に浴びせられ、全身の全感覚器が敏感になっていく。
このままじゃ、外で男とヤッてる時と同じに。
反射的にそう感じた真理子は耐えるようにきゅっと目を閉じ、歯を軽く食いしばった。
すると前田はふっと笑うと撫でていた乳房をきゅっと掴んだ。
「……んっ!」
「だから……例え見つかっても……止められはしません。大体、見られた方がいいんでしょ? 桜井巡査」
「いや……やめて……」
真理子は嫌がるように首を左右に振った。前田はぱっと手を離し、また乳房を撫で始めた。今度はさっきよりも強く、乳房の形が歪むくらいに掌で撫でた。すると真理子のブラが乳房を擦るようになった。
「……あっ」
乳首がブラに擦られて左右に揺れ、僅かな痛みを発した。だが、真理子には「痛い」と言う感覚はなく宙に放り出されたような、妙な感覚が全身に一瞬、走った。
「……感じてます? 桜井巡査」
「か、感じてなんて……」
「ま、どっちにしろ婦警さんが胸を触られているこんな様子……周りのビルで人がいてのぞいてたら……きっと興奮してるでしょうねえ」
「…………!」
悪戯っぽく前田が言ったその言葉に真理子ははっと目を開いた。
そんな訳ない!
そう言いたかったが、絶対に見られていないと言う確信を彼女は持ち合せていない。
もしかすると隣の、向かいのビルから私を見て興奮しているのかもしれない。
そう考えるとぞくっと背筋に興奮からか、悪寒が走った。
だが、その悪寒に彼女はぶんぶんと激しく首を左右に振った。
(何やってるの! 私は警察官よ! これは犯罪行為でいつもの外でするのとは次元が違うのよ!)
婦人警官真理子の自分が強烈なブレーキを彼女の暴走しかけた感情にかけた。
自分の中で自分と戦っている、な。
激しい首の動きに前田はそう思い、すぐに行動を起こした。真理子の胸を弄くりながら左手で彼女の顎を掴み、くっと顔を上に上げさせると、その唇に自分の唇を重ね合わせた。
「ん…………」
唇が合った瞬間、前田はすぐに舌を真理子の口の中に押し込んだ。彼女の口はしっかりと歯が食いしばられ、それ以上の舌の侵入を阻止していた。
前田はふっと彼女の口から自分の口を離した。ディープキスを拒まれたと言うのにその表情はなぜか満足げに微笑んでいた。
「まだ……スイッチが入ってないみたいですね……淫乱な露出狂だったら外に出ただけで濡れるって言うのに……」
「だ、誰が露出狂よ……私は……」
真理子が言葉を続けようとしたその時、前田がそっと彼女の顔面から体を逸らし、屋上からの景色を見られるようにした。
「あそこの建物……何か知ってますね?」
そう言って真理子の顔をある後方に固定させた。
彼女の視線の先には古いコンクリート造りの三階建ての建物がある。それは見覚えのある建物で見覚えのある車、見覚えのある旗が……
「け……警察署……」
「そう。ここから……中が見えますねえ」
確かに、ここから警察署は勿論、廊下を人が歩く姿まで見えた。
「上手く行けば向こうからこっちの様子も見えるかもしれませんね……あなたの上司や同僚とかにも……」
囁くように言う前田の言葉。「上司」や「同僚」の言葉に真理子の肩が震えた。
もし、こんな姿を見られたらもう警察にはいられない。女として暮らす事も何も出来なくなって、全てを失う。
まず真理子の心を襲ったのはそんな恐怖であった。だが、恐怖が襲ったのはほんの一瞬。次に襲ったのは期待だった。
本当にそうなるのか。もし見られたらどうなるのか、見た仲間はどんな風になるのか。いつも優しくしてくれる仲間や上司はどう見るのか。そして自分は仲間に、しかも婦人警官の制服姿で見られてどうなるのか。
今まで経験した事のない事を経験できるんじゃ。そんな期待だった。
そんな事を考え始めた。考えたくなくても蛇口の壊れた水道のようにどんどんと考えが流れ、彼女の受け皿からいとも簡単に溢れ出す。
かあっと全身の体温が上がっていく様子が感じられた。
「……そ……んな……見られたく……」
「本当?」
前田がそう言ったその時、乳房を再びキュッと握った。今度は乳首を確実に当て、シャツとブラの上から乳首の辺りを的確に掴んでいた。
「あんっ!」
ビクッと真理子の全身が震え、がくっと膝が折れた。
前田はニヤッと笑うと彼女の耳元に口を近づけさせた。
「それだけじゃない……確実に桜井巡査を見る男が四人、それと可愛い後輩がいるんですよ……充分に楽しめるでしょ……」
「た……楽しむって……」
野村に支えられて立つ真理子の口からはまだ婦人警官真理子の言葉がこぼれる。すると前田は再び真理子の唇に自分の唇を重ね合わせ、舌をねじ込んだ。
「んん……っ」
すると真理子の歯は僅かに開き、前田の舌の侵入を許した。前田は真理子の舌にからみ付くように舌を動かし、彼女の口の中を存分に堪能した。
その間、真理子は何の抵抗も出来なかった、いや、しなかった。
真理子は自分の中で明かに何かの火がついている事を感じた。婦人警官の真理子はそれを消そうとはしたが、前田が絶妙の手と言葉が消させはせずにいた。
さらに男達の手には自分や優華の写真。数々の犯行を見逃してきた警察官として致命的な事実。
そして自分に集中する事で三度も排泄を見せられ優華にこれ以上屈辱的な事が被られないかもしれない期待。
今まで積み重なってきた様々な事と火が付いた「野外で燃える自分」が真理子の心に一つの言葉を響かせた。
もう、どうにでもなれ。見つかったら見つかった時よ。
その言葉がいつしか婦人警官真理子ではなく真理子を一人歩きさせようとしていた。
「……随分慣れてるな、前田さん」
真理子が崩れていく様子は傍目からでもはっきりわかるのか、優華を抑えている吉田が唖然としながら見ていた。
「昔、前田さんは露出狂の変態女と長く付きあった事あるんだって。だから……そんな女の気持ちはよくわかるんじゃねえのか?」
同じように松永が見ながら呟いた。そしてそっと優華のお尻に手を伸ばした。
「俺は……お尻の閉まりがいい優華ちゃんの方がいいけどなあ……しかし、変態先輩を持って大変だなあ、優華ちゃん」
そう言いながら松永は優華のヒップを撫で回した。しかし、優華は悲鳴を上げない。ただ、真理子をじっと見つめるだけであった。
尊敬していた先輩が外に出た途端に少しずつ崩れていく。もしかしたら、私も知らないだけで本当はあんなのなのかなあ。
優華の心には動揺はなく、不思議と冷静で真理子を、そして自分を見つめていた。