これは夢……そう、悪い夢よ……。
こんな事は絶対にありえないから……ソルブレインが……ソルジャンヌが敗れるなんて……。
ソリッドスーツが壊されるなんて……そして私も……。
爆発事故を起こした研究所に急行した私達は手分けして逃げ遅れた被害者を捜索をした。
生体反応を検知した私はある部屋に入った。
そこに被害者はいなかった。
でも、代わりに見た事もない、イソギンチャクのような触手を持った奇怪な金属質の生物がいた。
ソルブレイバーに救援を求める間もなく、そいつはいきなり襲い掛かってきた。
一番太い触手が私を締め上げる。
私を守るソリッドスーツが悲鳴を上げ簡単に砕け散った。
何本もの触手が私に絡みつき、締め上げて行く。
ソリッドスーツは聞いた事もないような音を上げて軋み、ひしゃげた。
破壊されたソリッドスーツから何本ものコードや飛び出で、回路が剥き出しになる。
触手はそれを引きちぎり、毟り取り、砕いていった。
そして、触手は私を壁に向って投げ捨てる。
分厚いコンクリートの壁に顔から叩きつけられた。
壁は砕け、瓦礫となって崩れる。
凄まじい衝撃にマスクは耐え切れず、バイザーは半分砕け散り、口元のマスクが外れた。
瓦礫に埋もれた私の記憶はここで途切れる。
ソリッドスーツにはもう、私を守りきるだけの余力は残っていないようだった。
私の記憶が戻った、意識が戻ったのは体に痛みを感じた時だった。
痛みはヤツの攻撃で既に全身に刻み込まれている。
でも、その痛みは違った。
私の体を貫く痛み。
体の中で何かが蠢く痛み。
体と同時に胸の奥を引っ掻かれたような痛み。
割れたバイザーから見えたのは。
ソリッドスーツの上からヤツが私の大事な部分を貫いている光景だった。
ヤツのソレは鉄よりも堅く、バットよりも太く、バラの茎よりも刺々しかった。
破れずに、ギリギリ私を守ってくれているソリッドスーツの上からでもソレの形や堅さがわかる。
私の大切な部分、いや、女性として大切な部分を鋸で切ろうとするようにソレは動いた。
ソリッドスーツの中の大切な部分にスーツごと飲み込まれるソレ。
私は感じた事もない痛みにただ悲鳴をあげるしかなかった。
抵抗をしようにもヤツのそれは私の腕よりも長く、跳ね除ける事はできない。
ただただ、私の中をソリッドスーツ諸共蹂躙し続けた。
私は悲鳴を上げ、泣き叫びながら初めて、戦友とも言えるこのソリッドスーツに一番大切な部分の装甲がない事を呪った。
これは夢。絶対に夢。
ソルジャンヌがソルジャンヌのままレイプされるなんて。
凄く痛くて、凄く悔しくて、凄く屈辱的なのに、私はそれを受け入れていたなんて。
スーツごと入ってくるソレをしっかりとくわえ込んでいたなんて。
スーツの中からぐちゃぐちゃ、と音が聞こえていたなんて。
頭の中が真っ白になって、全身から力が抜けていったなんて。
ついさっきまで意識がなく、ぐったりとしていたなんて。
でも、夢じゃない。
壊れたスーツ。
割れたバイザー。
私のあの形にくぼんだライトスーツ。
ぬるぬるとした感触が残り、ひりひりと痛む下腹部。
その辺りからどくどくと流れる白くねばねばしたモノ。
ううん、絶対に夢よ。そう、夢。
スーツとマスクの中が汗と涙と涎と何かの液体に塗れて気持ち悪いって。
全身に力が全く入らず、動けないなんて。
動きたいけどそんな気もしないなんて。
きっと、夢。そうでないといけない。
私はソルブレインの隊員、ソルジャンヌ。
負ける訳がない。負けちゃいけない。
絶対に最後はソルブレイバーとソルドーザーと一緒にヤツを倒すから。
だから……応答してよ、ソルブレイバー、ソルドーザー。
どうして応答しないの? どうして交信できないの? どうして誰も何も言わないの?
私はもう……これ以上戦えない。
助けて……みんな……早く……早く助けに来て。
みんなとは違う足音がこっちに近付いてきているから――
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