終点までの夢


「はあ」

 今日、俺は女に振られた。突然だった。待ち合わせ場所で面を合わせた瞬間にそう宣告された。
 理由はわからない。飽きられたのか、嫌われたのか。訊いてももう終わりにするの一点張り。とにかく振られた。
 心当たりとすれば最近、刺激がなくなった、あるいは何でも淡白になった。しかし、その程度で簡単に捨てられる物なのか。

 俺は街を宛てもなくふらついた。
 しかし、憂さを晴らしに風俗へ行ったり酒を飲んだりしない。そんなことしてもただ空しさが増すだけ。
 結局ゲーセンに長い時間居座って適当に楽しみ、帰ろうと駅へと向かった。

 駅は人は結構いるがそれほどの混み具合じゃない。まあ、終電まではまだ時間があるからな。
 俺は改札を抜けると、とんとんと階段を進み、駅の一番隅っこ、ここから出る路線で一番の田舎路線のホームへと向かった。
 ここに向かう人の波は他よりも終電が早いせいか、他の路線に比べて若干多いように見える。

 ホームへと続く廊下を歩いていると警察官が歩く後姿が見えた。
 片方はすらっとした男性警官、そしてもう一人は隣の男と同じデザインの制服だが特徴的な丸い制帽とやや華奢な体格と大きなケツで婦人警官とわかった。
 婦人警官を見ながら俺はその後をつけた。いや、ただ俺の行く先とこの2人の警察官の行き先が同じなだけだった。
 
 俺の乗る路線は全線乗ると普通電車ならば片道2時間ほどかかる路線。無人駅だらけの典型的な田舎路線で本数も少ない。
 お陰で最終が近付くに連れて乗車率が相当上がる路線だった。

 そうなると増えるのがスリや痴漢。ここはスリや痴漢が多いと噂のある路線だった。
 噂だけなら相当色々ある。
 車掌もスラれた事がある、とかスリすらスラれた事があるとか、始発駅からずっと痴漢に慰み物にされ、降りる駅でも降りるのを許されず、山間の無人駅に放り出されたとか、10人近い男で1人の女を集団で襲うとか。
 そんな路線に制服の警察官が2人。警察官の姿を見せて犯罪を未然に防ごうと言う事なのか。 
 まあ、今から犯罪をしようと言う奴らには怖いのだろうが、そんなのに無縁な俺には余り関係はない、ただの風景だがな。

 ホームに降りる時にちらっと追いぬきざまに婦人警官の顔を見た。
 きりっとしていかにも遊びを知らなさそうな女。キツそうに見えるのはその制服のせいなのか。あるいは婦人警官という職業が彼女をキツそうに見せているのか。
 余りじろじろと見ていると呼びとめられそうな気もしたので、俺はそれほど混み合わない後ろの方、いつも乗っている車両へと向かった。

「……もしもし、そこのお兄さん」

 車両3両分くらい歩いたその時、突然背後から声をかけられた。
 俺か? とも思ったが変に絡まれるのはゴメンだ。聞こえない振りをしてそのままいつもの場所に向かった。

「……ズボンの後ポケットにあった茶色い財布、スラれていますよ」
「なっ!」

 男の言った財布はまさに俺の財布の外見。そして、確かに後のポケットに押し込んでいる。俺は慌ててケツにあるポケットを触った。財布の膨らみはない。ただデニムの生地の手触りだけがあるだけ。
 俺は慌てて背後を振り返った。そこにはパッとしない風体、その辺のパチンコ屋や場外馬券売り場に行けばごろごろいそうな、少々歳の行った爺さんがいた。
 爺さんは人懐こい笑みを見せながら俺の顔を見ると一つ頷いた。

「……私にね」

 そしてそう言うと茶色い財布を手にしながらもう一つ笑った。

 本来ならばそこにいる婦人警官に突き出すべきかも知れないが、俺はなぜだかそんな気になれなかった。
 警察官の目が光っている中、俺に気づかれずに掏り取ったその技に感心したのか、あるいはこの爺さんの笑顔に中ったのか。

「財布はすまない。実はなお兄さん。面白い話があって、お兄さんにそれを持ちかけていいかを試したんだよ」

 いや、この爺さんの言う「面白い話」に興味があって突き出すのを保留にしているだけだった。

「……で、持ちかけていいとなったんだな」
「ああ。もしダメだったらそのままこれを持ってオサラバさ」

 爺さんが屈託なく笑う。もっと犯罪者ってのは怖そうな物なのだろうがこの爺さんは楽しんでいるようにすら見える。

「でよう、お兄さん」

 ふっと爺さんの笑みが消える。俺にそっと顔を寄せて内緒話をする時のような格好になった。

「最近、女に飢えてねえか」

 ポン引きか? 俺は断る準備を心の中で始めた。

「何も商売女を紹介する訳じゃねえがな」

 にやりと爺さんが笑う。全く、この爺さんは俺の心がわかるのか。

「……女と別れたばかりだ」
「そうか。じゃ、発散せにゃなあ。若いんだし」
「やっぱりポン……」
「そうじゃねえって。発散させる女は商売女じゃない。今から素人の女を……」

 襲うんだ。
 雑踏に消えるような声だがはっきりそう聞こえた。ぎょっとした俺は爺さんを見た。

「……正気か? 犯罪だぞ」
「本当に気持ちのいい事は多少の危ない橋は覚悟しねえと。それに、刺激が強いほどもっとスッとする」

 爺さんはさも当然と言いたげにするすると言う。言っている事はとんでもない事だがなぜだかとんでもなさを感じる事はできなかった。
 爺さんはニヤリと笑いながら続けた。

「なあに。スッとするのはあんただけじゃねえ。何人もいるんだ」
「何人も?」
「ああ。一車両の立っている客全部って所……どうだい? 今1人キャンセルが出て空きがあるんだ。本来なら5万って所だが……3万でどうだ?」

 スッた時に財布の中身を見たな、さては。それぐらい使っても財布は空にならない程度の金額を提示してきた。
 俺はふむと一つ息を吐いてちらりと爺さんを見た。

「……大丈夫なのか?」
「ああ。そりゃあ……規模がでか過ぎると逆に取り締まれねえし。3万は安いって感じられる事は確実! それに……」

 ちらっと爺さんが視線を流した。

「お相手はあの女だしねえ」

 視線の方向を俺は見た。
 そこには制服に身を包み、凛とした顔立ちで辺りを警戒している、あの婦人警官がいた。

 俺はいつも乗る車両の停車位置ではなく、一番混み合う階段そばの停車位置に立った。そこへ行けとあの爺さんに案内されたのだ。
 そこにはスーツを着た普通のサラリーマン、いかにも遊び人風体の若い男、ちょっと怖めなお兄さん、白髪の爺さん、夜遊び帰りの女子高生……夜の街に縁のありそうな人種のごった煮と言う雰囲気となっていた。
 そんな中で辺りに睨みを効かせる婦人警官とやや睨みに眼光のない警察官。2人は浮き上がっているように見えた。

「……本当に大丈夫か」

 婦人警官の凛とした、それでいてぞくっとするような視線を背中に感じつつ、俺は隣の爺さんに念押しするように聞いた。

「まあ、最初だから不安に思うのは仕方ねえがな……なあに。その目で見りゃ信じれるさ」

 爺さんは相変わらず普通に振舞っている。俺はこの企てがすぐ後にいる婦人警官にバレるのじゃないかと気が気でなくちらりちらりと背後を気にした。その時、すっと俺の背後に俺よりも背が高い、ちょっとした大男が立った。

「よう、久し振り……5万か?」

 爺さんがにやりと笑って顔を前に向いたままで言う。
 大男も前を見たまま表情を変える事なく、手持ち無沙汰に両手をにぎにぎと結んだりひらいたりを繰り返していた。

「10万だ」
「滅多に取れるもんじゃねえしなあ……勝負して正解だ」

 まるで馬券を取ったか取らないかと言うような会話。しかし、この爺さんと顔見知りと言う事は――。
 大男のお陰で婦人警官の視線を気にする事がなくなり、俺は爺さんや大男、他の客と同じように前を向いて立っていた。
 その時、ゆっくりと電車が入線してきた。車両が完全に止まりドアが開くとぞろぞろとそこで待っていた客が入って行った。そして、それと一緒に警察官と婦人警官の2人も乗り込んでいった。

 車内はぎゅうぎゅう詰めとまではいかないが、そこそこの混み具合。立っている客は肌が触れ合わない程度の余裕はある。
 俺と爺さんは車両の丁度真中辺り。婦人警官と警察官もその辺りに立って人の隙間から辺りを見渡している。

「動き出したら俺に付いて来いよ」

 ぼそっと爺さんが言った瞬間、ドアが閉まった。
 がくんと一つ揺れて電車が動き出す。すると爺さんは動きに合わせるように雑踏を泳いで移動していく。その後にできる隙間を俺は同じく揺れ流がらついていった。
 さっき見た大男も動いているように見える。サラリーマンも女子高生もみんな揺れに揺らされて動く。
 ……まさか?
 爺さんが立ち止まる。俺も立ち止まる。すると爺さんはちらっと右側に視線を向けた。するとそこにはあの婦人警官がすぐそばにいた。俺は彼女から見て左側。少し手を伸ばせば制服に届きそうな位の近さにいた。

「……左はいつもと違う感触だから……新鮮だぞ」

 そして何を言いたいのかわからない一言を俺に言ったその時、どこからともなく携帯電話の着信音がけたたましく鳴り響いた。

「もしもしっ! あ、今電車の中です。失礼します」

 真面目そうなサラリーマンが携帯に向かって話す。
 普通はこそこそと話すような事だが、動転しているのか車内のどこにでも聞こえそうな声で話し、有無を言わさずに電話を切った。

「……次の駅、過ぎてからだ」
「え」

 爺さんがそう言ったその時、またがくんと電車が揺れてスピードが落ちていった。

 始発駅の次の駅に止まる。何人かが降りたが混み具合は変わらない。
 ドアが閉まる。またがくんと一つ揺れて動き出す。ごとんごとん、足音を響かせて電車が走る。
 何事もない、普通の静かな車内。結局何もないんじゃないか、と思ったその時、

「やめてください!」

 いかにも若い女の声が車両の隅の方から上がった。俺を含めてほぼ一斉にその方向に視線が向いた。もちろん、警察官と婦人警官も。

「どうしましたか! 警察です!」

 若い警官が混雑の人波を掻き分けて声の方に向かっていく。

「通してください! 警察です! 通してください!」

 するすると人波を掻き分けていく警察官に比べて婦人警官はあまり前には進んでいなかった。
 身のこなしが固く場慣れしていない警察官がするすると声の方に向かい、身のこなしが軽そうな婦人警官が進んでいない。
 見ると警察官の行く先を立っている乗客は身を寄せ合いながら道を作って警察官に協力していたのだ。そして、婦人警官の方は、

「どいてください! 通してください!」

 婦人警官の行く先にいる乗客は身を寄せ合おうとしているがいかにも動きは緩慢。むしろ彼女の進路を妨害しているようにすら見えた。
 そうか、今男の警官と婦人警官を引き離しに掛っているんだ。と、言う事はこの周りの乗客が全て――。
 感心していたその時、電車の揺れに乗じてあの大男がぬうっと彼女に立ち塞がるように立った。

「どいてください! そこをどいてっ!」

 婦人警官の声はややヒステリックな声に聞こえた。近付けない事にイラついているのか、その目はかなり厳しく、大男を睨んだ。その時、

「うわあっ! や、やめろ!」

 男の声が響いた。その声に婦人警官ははっとし、大男につかみ掛かるようにして近付き、その身体越しに警察官が向かった先を見た。

「どうしたの! 今行くから! どきなさい! 警察よ! 邪魔すると公務……」

 婦人警官が何かを続けようとした、その瞬間、

「しっ……きゃああっ! 何をするの!」

 大男が突然その分厚く大きな両手で真正面から婦人警官の胸を制服の上から鷲掴みにした。
 婦人警官が反射的に悲鳴を上げ、自分の制服の上をぐいぐいと揉み込む両手を掴んだ。

「やめなさい! 公務執行妨害よ! 手を……手を離しなさい!」

 婦人警官は大男の両手掴み、それから逃れようと身体を逸らした。
 しかしその動きはどうにもくねくねとなよっているようにも見える。
 だが、その顔は男を睨みつけて警察官らしい厳しいまま。体格差があるヤツに対してもそんな顔のできる強い女。いや、これが警察官の習性ってヤツなんだろう。
 大男の手は婦人警官の胸をわしわしと揉んでいた。紺色の制服が皺寄ったりぴんと張ったり。まるで制服の中に犬でも隠しているかのようにうごめいていた。

「離しなさい! わからないの! 私は警察官よ!」

 見りゃわかる。その制服を着ているから。わかってるからやっているんだろう。
 しかし、婦人警官にはわかりたくないんだろうな。警察官を襲うようなヤツがいるって事を。
 犯罪者以外は皆善良な市民だって……まあ、この大男は何か犯罪の一つや二つはやってるだろうけど。
 大男の太い指が胸を包む制服にめり込み、きっちりとしていた制服を乱していく。制服の袂から徐々にネクタイがずり上がって曲がっていく。
 余程その手触りがいいのだろうか。大男の息遣いが荒く興奮をしているようだった。

「離しなさい! やめなさい! 今すぐやめなさいいっ!」

 なんとかして大男の手から逃れようと狭い人の隙間の間で婦人警官が悶える。しかし、込み合う車内で逃れるスペースはない。

「ほれ、もうちょっと近付け」

 爺さんが俺を婦人警官の方へ押す。俺の二の腕ともぞもぞと動く婦人警官の制服とが俺の服と擦りあう。
 ふと彼女の周りを見るとさっきまで少しの隙間があった乗客が彼女に息のかかるくらいすぐそばまで近付いていた。どうやら婦人警官のそばにいる男が彼女に迫ってその逃げ場を潰しているようだった。
 そんな事に気付いているのか、いや、それどころじゃないのだろう。婦人警官は顔をしかめいやいやと首を横に振りながらその細い両手で大男のぶっとい手首を掴んでいた。 

「離すのよ……今すぐに……今すぐ……やめ……ひっ!」

 突然婦人警官が甲高く短い悲鳴を上げ、びくっと身体を振るわせて手首を掴んでいた手を離した。
 離した手はそのまま自分のヒップを掴んだ。見ると紺色のスラックスに包まれた大きなヒップをエリート臭のする、スーツ姿の男が撫でていた。お触りなんて程度じゃない。ケツの割れ目にスラックスを食い込ませるようにぐいぐいと手を埋めさせたり、丸いラインを歪めたりと胸に合わせたかのような力技だった。

「あ、あなた達、グルなの!」

 ようやく気付いたか。しかし、2人だけじゃなさそうだが。
 婦人警官は胸を揉む大男の片方の手首を右手で、ケツを撫でるエリート男の手首を左手で掴んだ。しかし、左手の方は利き腕じゃないせいか、ケツを動き回る手を止められない。さらに、片手1本ではこの大男のての動きも止められない。
 それ以前に、前も後も男は片手が完全にフリーになっている。好き放題に婦人警官の胸とケツを揉みくだしまくっていた。

「や、やめなさい……男が2人がかりで1人を襲うなんて……卑怯よ! あなた達それでも……いやっ……!」

 どうしようもなく身体を触られ撫でられる気持ちの悪さにおぞましさ。
 婦人警官は前後の男を睨みつけるような目で見たが、その表情はやや引きつり気味。眉間に皺が寄り、きちんと被っていた制帽も少し曲がっている。
 警察官と言えども女は女なんだな……しかし、普通の女ならば泣き出すもんだが、泣かないのは警察官の根性か。
 胸を揉む大男もケツを触るエリート男も息遣いは荒くなっている。その息遣いが車内に響き、室温と興奮度を徐々に上げていく。
 そんな時、爺さんが俺の袖を引いた。

「そろそろだ……準備しておけよ」

「ひっ! な、何をするの! これ以上やめなさい!」

 胸を揉んでいた手が婦人警官の制服のボタンを弄った。
 片手一本では止められるはずもなく、ぷつぷつとボタンが四つ、あっという間に外されてばっと紺色の上着が二つに割れた。
 お、結構この婦人警官、胸がある。ワイシャツになるとラインがすぐに出るからなあ。さらに大男の手がワイシャツのボタンに掛かる。

「やめなさいってわからないんの! やめなさい! やめてぇっ!」

 ケツを撫でる手をつかんでいた右手も大男の手を掴みに行く。すると、ケツを撫でていたエリート男の動きが変わった。

「あっ! やだっ! やめて!」

 さっとベルトに手をやりそのままバックルを緩めさせる。そして前のジッパーを下ろした。婦人警官のスラックスも脱がせるようだ。
 今度はベルトを緩めて脱がせようとする手を掴む。その代わりに身体をよじってボタンを外す手から逃れようとしていたが、無駄だろう。案の定次々とボタンは外されて行った。そして、

「いやああっ! やめてっ!」

 ばっとワイシャツも二つに割れた。薄い水色のブラが眩しい。
 その驚きなのか、手の力が緩んでベルトとジッパーが緩められ、まるでローライズのようにスラックスが降りた。ちらりと見えるブラと同じ色のパンティのゴム。
 そんな時、軽い調子の短い電子音が聞こえた。しかも色んな種類の音が幾重にも重なって。
 見ると人垣の上、隙間、間、そして下とありとあらゆる場所からにょきにょきと携帯電話のカメラが婦人警官に向けられている。

「あっ! な、何を撮っているの! さ、撮影を止めなさい! 勝手に撮らないで!」

 婦人警官はカメラから顔を背ける。しかし、背けた先にも婦人警官を煽るようなアングルで向くカメラが。
 前後左右上下、彼女の360度全てにカメラが向けられていた。

「やめて! やめて! 撮らないで! こんな……こんな……!」

 俺はごくりと生唾を飲み込んだ。
 顔を隠そうと手を離せば胸とケツは無防備でヤラレたい放題。かと言ってその手を抑えようとすれば顔出し。
 どうしようもなく弄ばれている女。いや、婦人警官。それがこんなに色っぽく、興奮させるとはな。俺は制服フェチとかそう言うのじゃあないとは思ってたが。
 爺さんは「準備をしておけ」と言ったが、もちろん、準備は出来てる。もうパンツとデニムを突き破りそうだ。

「……準備はいいみたいだな」

 爺さんが俺の下半身を見るとふっと笑ってすうっと婦人警官に近付いていった。

「やめて……撮らないでって言ってるでしょ!」
「婦警さんよ。大人しくしな」

 さっきまでの普通の爺さんとはエラい違い。眼光鋭く獲物を狙う鷹か鷲みてえな目で婦人警官を見た。

「あ、あなたが主犯ね! い、今すぐやめさせなさい! こんな事……こんな事!」

 婦人警官が涙目で爺さんを睨む。しかし、爺さんは妙に嬉しそうな顔で笑い、頷いた。

「止めるのは無理だ。みんな高い金出してるんだ」
「そんなの貴方の勝手でしょ! 私はそんな女じゃないっ! 私は警察官なのよ!」
「わかってる。そんな女じゃなくてもこんな女だ」

 そう言いながら爺さんは剥き出しになったブラをぐいっと下ろそうとした。

「きゃあっ! もうやめて! いいでしょ……こんな事まで……」
「まだまだ……なあに、この電車が終点につくまで自由にされてりゃいいだけだ」
「バカな事言わないで……ひぃっ! どこを触っているの!」

 緩んだスラックスの口からエリート男が手を入れて直接婦人警官のケツを撫でまわし出す。
 今まで布地越しだったのに汗ばんだ手がいきなり地肌にぴとっと来たら、悪寒がしそうだ。
 爺さんはスラックスの中に侵入した手を掴んで肩越しに男を睨む婦人警官を笑いながら見ていた。

「終点までの我慢だ。何もこのままあんたをどっかに監禁してコンクリ詰めにしようとかそう言うのじゃねえ」
「そんな……そんな事許される訳……」
「電車の中だけに収まりゃいい……今撮られている写真が電車から漏れたら……どうなる?」
「…………!」

 携帯で撮ってるから親指一つですぐにでも流出するわなあ。婦人警官の顔が凍りつく。
 爺さんは続ける。

「あと、男もいるだろ? 女の恥ずかしい写真が流出すりゃまあ、商売女にでもなりゃいいが、男が流出したらなあ……」

 はっと婦人警官が人垣を見る。

「や、やめろ! 俺はそんな! 離れろ! 離せ!」

 人垣の向こうで姿は見えないが、必死に何かと戦っているが……状況はこっちと余り変わらないのだろう。
 婦人警官はきっ、と爺さんを睨んだ。

「ひっ、卑怯者!」
「悪人はみんな卑怯なんだ。そう言う事も今日勉強するんだな、婦警さん……どうする? 電車の中だけに納めるかい?」
「…………」

 涙目で婦人警官が悔しそうに下唇を噛んで俯く。返事はしない。その時、

「へへ〜、ほ〜ら、婦警さあん」

 婦人警官の右側に立つ男が声を上げた。

「? きゃあああっ! 何してるの! 今すぐ片付けなさい!」

 婦人警官が男を見ると絶叫した。見ると男が作業ズボンのジッパーを下ろしてびんびんになっているイチモツを出し、その頭を婦人警官に向けていた。
 涙目で慄きながらも欠片ほどの毅然さでなんとか取り持っている。そんな婦人警官に向く全方向からの携帯電話が軽く鳴き続けている。
 男はイチモツから離れようと伸びた婦人警官の右手の手首を掴んだ。

「ほ〜ら、ほら。気持ち良くさせてくれよう〜」

 男は掴んだ婦人警官の手を無理やりに自分のイチモツに押しつけ、それを握らせようとしている。

「いやっ! やめて! 気持ち悪い!」

 婦人警官は腕に力を入れて抵抗。さらに男から離れようと引っ張る。合気道とかやってる割には普通の酔っ払いに絡まれる女と変わらないな。
 その間も胸やケツは触られ放題、揉まれ放題。しかし、それよりも手の方が重要らしく感じていないようだった。
 その時、爺さんがすうっと婦人警官にまた顔を寄せた。

「電車の中だけだ。これは夢と思え……夢、電車の外へ漏らしたいか?」
「…………!」

 婦人警官は涙と泣き皺でぐちゃぐちゃの顔を爺さんに向け、キッと睨む。まだ少しは抵抗の意思がありそうだな。でも、行く先は……一つだろうよ。
 案の定、婦人警官は腕の力を抜き、調子を整えるように大きく息を吐くとそっと男のイチモツを右手で握った。

「うひょ〜婦警さんの手は暖かくて柔らけ〜。さあ、ゆっくりと手コキだ。わかるだろ?」

 男が要求する。しかし、婦人警官は動かない。何をしていいのかわからないのか?

「へへっ、手コキも知らねえのか。こうだよ、こうして俺を気持ち良くするんだ!」

 男が自分のイチモツを握る婦人警官の手を包み込み、ゆっくりと前後に動かし始めた。
 ゲスな野郎の赤黒くぬめぬめした物を握りそれを扱く。そんなの見たくないのだろう。婦人警官は顔をこっちに向けて眉間に皺を寄せながら泣いていた。

「うう……こんな……なんで…………こんな……警察官……なのに……」

 うなされるように口から言葉がこぼれる。そして、ふと涙が溢れる目が開き、俺を見た。

「……助けて……お願い…………警察に……」

 周りに聞こえないようにかこそっと消えるような声で俺に訴えかけた。多分俺が生まれて見る初めての哀願ってヤツだ。

「さ、お前も準備だ。3万円分遊んでもらえ」

 爺さんが俺に耳打ちする。何をさせろとは一言も聞いていない。しかし、今の婦人警官の状態で残された部分、3万円の価値のある部分はそこしかない。
 俺はジッパーを下ろし、勃起した俺自身を露にさせた。
 婦人警官ははっとした顔を一瞬向けたが失望したようにがくっとうなだれた。
 哀願と一緒に俺は他人の絶望を生まれて初めて見た。

 にちゃにちゃにちゃ……
 今まで見せられた婦人警官の様に俺のモノはヨダレを垂れ流し、すっかりぐちゃぐちゃになっている。
 婦人警官の左手がそれを直に握りぐしぐしとゆっくり扱いている。
 右側の男の言うように柔らかく暖かい女らしい手。それに包まれるぎこちない動きで扱かれる。
 これは……いい……。

「………………」

 婦人警官は黙って左右の手で二本のイチモツを扱き、胸を揉まれ、ケツを撫でられている。
 爺さんの言うようにこれは夢だと言い聞かせているように、そして、反応を示さない事が俺達への抵抗と言うように。

「黙っちゃあいけねえな。喋らないのに使わないのならば!」

 その時、爺さんの視線がふとある方向に向かう。
 すると人垣から分厚い唇の男が現われて黙りこく婦人警官に歩み寄った。そして、俯く婦人警官の顔をぐいっと上げさせた。

「えっ、んんっ!」

 顔を上げたと同時、男の分厚い唇が婦人警官の顔に被さった。
 婦人警官は抵抗しようにも手は離せず、制帽を被った頭からぐっと押さえられているせいで顔も背けられない。

「おい! 手が留守になってるぞ!」
「んんっ! んんんんん!」

 唇をちゅうちゅう吸われる様な強引なキス。俺を握る手の動きが止まる。しかし、右側の男がそう言うと再びゆっくりと扱き出す。

「んん……んはあ……いやあ……」

 男が唇を頬や首筋をべろんと舐める。
 婦人警官はそれでも俺を扱く。ゆっくりとぎこちなく。

「触るだけじゃな」

 胸を揉んでいた大男がブラを下ろし、乳首を露にさせる。

「ああ……やめ……」

 もう悲鳴もあげない。大男は乳首を赤子のように口に含み味わい出す。
 それでも婦人警官は俺を扱く。ゆっくりとぎこちなく。
 このぎこちなさがまたいいな……オナニーする時でも左でするといつもと違う味わいを味わえるからなあ……。

「やだ……ううう……やだ…………たす……け……んんっ……」

 うめくように婦人警官が言う。その口をまた男が唇で塞ぐ。その瞬間、制帽がぽろりと頭から外れ、床の上へ転げ落ちた。
 ふと、俺は足下を見る。婦人警官を撮影しようと動く男がぐしゃっとあの丸い制帽を踏んづけている。
 しかし、そんな事に気付く事もなく、婦人警官は男達の相手となり続けた。
 その両手は男のガマン汁で、顔、首、胸は男のヨダレで、それ以外は彼女の脂汗で濡れしぼっていた。
 ちゅくちゅく……俺のモノがいやらしく鳴く。女のアレが濡れて指で掻き回している時のようなあの音。
 ぎこちなく、ゆっくりとしていた婦人警官の扱く手。それが徐々にぎこちないままでも徐々に早くなってきた。

「ああ……いいぞ……激しく……」

 俺は思わず声を漏らした。もう婦人警官は早く済ませたいと思っているのだろうか。

「いいぞ〜……いいぞ〜ぎゅうぎゅうと締めつけて〜」

 右側の男も声を上げる。婦人警官の二の腕が忙しく動いている。利き手はもうさっさと出させようとしているように見えた。

「あふっ! いいぞいいぞ! ああっ!」

 不意に男の声が上がったその時、一瞬しん、とした沈黙が流れた。少し首を担げて見ると肌蹴た紺色の制服、スラックスに白い筋が描かれていた。
 片方は方がついた。後は。左手の動きが忙しくなった。
 亀頭の丁度首の所を締め上げるように掴んでいたが徐々に頭の方、カリに手が動き出す。
 ちゅくちゅくちゅくちゅく……
 俺の亀頭を片手で包み込み、何かを絞め殺そうとするような力で俺の何を扱く。
 さっきまでの仕方なしにやっていたぎこちなくゆっくりした手の動きは俺の勃起を維持するのに役立ち、今の早く済ませたい一心の動きは俺の性的興奮を高める。
 全く、この婦人警官は無意識のうちに自分のそぐわない方向へと成り行きを転がしている。
 俺のアレは真っ赤に焼けたようになり、熱を帯び、先端が泡立っている。オナニーでもこんな爆発寸前にまでなる事はない。

「うう……あっ、出る……出るぞっ!」

 俺は婦人警官の左手を掴んで外させた。

「制服は……い……や……」

 婦人警官が微かにそんな事を言ったような気もしたが聞こえない。爆発寸前の俺のモノの先端を婦人警官に向けた。そして、次の瞬間、
 ぷしゃあっ!
 粘りっけのある、真っ白な液体が噴出し、婦人警官の紺色の制服に飛び散った。ザーメンはべっとりと紺色の布地に絡みつき、浮き出ている。そして、それは数回吹き出て幾筋ものザーメンの流れや溜まりを作った。

「はあはあ……」

 吐き出す物を吐き出した俺のモノはだらんと力無くしなだれた。
 その先端から残りのザーメンが溜まり、ぽたりと床に落ちた。
 その雫はいつの間にか俺の足下に転がっていた、踏み潰されて形の崩れた婦人警官の制帽の上にぼたっと落ちた。

「次は南八野、南八野です」

 車内に車掌のアナウンスが流れる。南八野は終点の一つ手前の駅だ。
 ここまでに婦人警官はさらに数人を手コキして制服を白濁に染めさせ、胸もなめられ続け、キスもされ続けていた。何十人もの男に弄ばれ、嬲り者にされていた。

「……もう……いいでしょ……次の次で終点なんだから……」

 疲れ果てた様子で婦人警官が爺さんを見て訊く。すると爺さんはにやりと笑った。

「まだ使われていない場所があるだろ?」

 そう言うと初めて爺さんが婦人警官のスラックスに手をかけ、その素早い動きでジッパーやバックルを外させた。

「きゃあっ!」

 すとん、とスラックスが落ちて水色の下着が露になる。婦人警官は落ちたスラックスを拾おうとするが、周囲の男が抱え込むようにして抑えてそうさせない。
 婦人警官は恐る恐る爺さんを見る。欠片ほどあった婦人警官の面影はもう無い。ただ怯えるだけの女がそこにいた。

「まさ……か……お願い! もうやめて! 終点に……」

 婦人警官が何かを言おうとしたその時、突如電車ががつん、と言う鈍い音と共に急ブレーキをかけて止まった。

「線路上に異物があった模様です。確認するまでしばらくお待ち下さい……」

 アナウンスを聞いた瞬間、婦人警官ははっとした顔を見せた。

「ま、まさか……」
「そう言う事だ。さあ、まだまだ!」
「い、いやあああっ!」

 その後の婦人警官はラストスパートと言わんばかりに爺さんを含め数人の中心メンバーにヤラれた。
 生で挿入されて中で出されて。後ろから攻められながらフェラチオ。
 AVでしか見た事のないような事が目の前で繰り広げられ、俺は思わずオナニーをした。
 その溢れる俺の精はと言うと、婦人警官ではなく、踏み潰されている制帽へと向き、再び紺色に白線を流すのだった。
 
 しばらくして、電車は終点に着いた。ぞろぞろと客が降りる。もちろん、俺も。

「この駅の裏に空き地があってそこにバスを用意してある。帰りはそれで帰れ」

 爺さんはそう言うと人ごみに消えた。
 爺さんの言うように駅裏の空き地には貸しきりバスがあり、それに乗ると始発駅に向かって走り出した。
 ふと窓を見る。さっきまで乗っていた電車が車庫へ向かうのか何事もなく走り出していた。
 電車の中だけの事。夢だと思えか。
 しかし、あの婦人警官と警察官、夢で済むのだろうか。
 携帯を取り出して二度三度ボタンを押す。
 液晶画面に出た画像。
 ザーメンまみれの制服を肌蹴させ、足跡やザーメンの跡を残してつぶされた制帽を頭に乗せた婦人警官がいた。
 婦人警官はぐったりと駅の男子便所の床に放置されている。
 俺は携帯を畳み、軽く手の甲をつねった。
 少しだけ軽い痛みが走っただけだった。


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