事後処理



「はあ……はあ……」

 夜の街の片隅。古ぼけた雑居ビルの陰から女性の吐息が零れてきていた。
 吐息と共に辺りに漂うのは鼻を突き、むせ返るような栗の花臭。

「はあ……はあ……」

 吐息をこぼす彼女はこつん、とコンクリートにもたれかかった。
 彼女は紺色の婦人警官の制服に身を包み、制帽を被り、黒革のロングブーツを履いていた。乱れも狂いもない婦人警官として街の治安を守るべく回っていた。つい、数時間前までは。
 今は違う。
 雑居ビルの谷間で制服を肌蹴させられ、ブラを引き剥がされ、パンストを引き千切られ、ロングブーツを片方だけ脱がされた。
 そしてその体に、顔に、口に、体内に、紺色の制服に、制帽に、黒革のロングブーツに白濁液をぶちまけられた。

「はあ……はあ……」

 だらしなく開いた口や引き裂かれたように開いた陰唇から白濁液が溢れるように零れて制服を、アスファルトの地面を濡らしている。
 そんな無残な自分自身の姿、蹂躙された婦人警官の姿をぼんやりとした眼差しで見た彼女は一つ、呟いた。

「……五人……かあ……はあ……」

 呟いてすぐにこの数時間の記憶が頭の中で再生された。
 


 突然、背後から襲い掛かられた彼女は雑居ビルの間に引きずりこまれ、アスファルトの上に転がされた。

「何をするの! 私は警察官よ!」

 強い眼差しをその場に立つ五人の男達に向けて、ありったけの力で声を投げつけた。しかし、男達はニヤつくだけで怯む気配はなかった。
 それどころか、その言葉を待ってましたとばかりに五人が一斉に彼女にのしかかって行った。

「何をするの! 止めなさい! 今すぐ止めなさい! 止めなさいって言ってるのが分からないの! 離しなさい……ひっ! 何を……やめなさい! それ以上は……やめなさいいい!」

 金切り声で男達に命令する婦人警官。だが、その声と命令には男達を抑止する力はなく、その征服心を滾らす効果しかなかった。

「止めなさ……ひぃ! やめて……やめてええええ!」

 上着、シャツを開かされてブラが露となり、スカートを捲り上げられて脚を開かされた時になって彼女の口から悲鳴と哀願の声が上がり、雑居ビルのコンクリートの壁を削った。

「……強姦魔が二人……一人は足フェチ……一人は制服フェチ……ううん、婦人警官フェチね……そして、一人は……ロングブーツフェチ……だったわね……」

 白濁液塗れとなったロングブーツと紺色の制服、そして自分の体を見ながら呟く。
 自分の体と制服に刻み込まれた婦人警官襲撃犯の記録と記憶。
 彼女はぼんやりとそれを見たままで再びその時の記憶を再生させた。



「ん……ううん……んんん……」

 婦人警官の悲鳴と哀願の声は聞こえなくなっていた。
 その代わりに婦人警官の篭った喘ぎ声が聞こえていた。
 アスファルトに地べたに座らされた彼女はその口に屹立した男のペニスを咥えさせられ、両手にそれぞれペニスを握って扱いている。
 投げ出した脚には別の二人の男が吸い付かれていた。
 一人はロングブーツに包まれた脚を撫で、舐め、ペニスを擦りつけ、一人はロングブーツを脱がせてパンストに包み込まれた足を舐め、臭いを嗅ぎ、ペニスを擦り合わせていた。

「んく……ん……んんんん……」

 彼女は目を閉じて咥えたペニスを嘗め回しながら両手のペニスを優しく、時にぎこちなく扱いた。そして、両足から伝わる二つの男の体温と吐息。

「んく……んっ!」

 彼女の口の中で生暖かくぬるっとした何かが破裂したように飛び散った。その瞬間、口からペニスが引き抜かれた。

「けほっ! けほっ!」

 咳き込みながら俯くとその口から白濁液がとろーっと零れてくる。

「けほっ! けほっ……んんん!」

 しかし、彼女に余裕はない。そのまま顔を上げさせられると右手で握っていたペニスが口の中に入れられた。
 ぽん、と何かの合図をするように制帽が軽く叩かれる。
 彼女は新たに入れられたペニスを再び舐め始めた。
 その時、彼女の制帽に今引き抜かれたペニスがこすり付けられ、紺色のカンバスに白濁の筋が描かれていた。

「…………なによ」

 ぽつり、と呟いてロングブーツが履かれた脚を見る。
 左脚はジッパーが完全に上げられてロングブーツが脚にぴったり吸い付いている。そこにおびただしい白濁液がかけられて黒革の上に白の波紋のような模様を描いている。
 右脚はジッパーが下ろされてその中に白濁液が飛び散っていた。
 パンストに白濁液が染み付き、脚とロングブーツの間にまで入り込んでブーツの中がぬるぬるとしていた。
 そして、肌蹴た制服。
 ここにも白濁液が飛び散って紺地に白い線で前衛的な作品が描かれている。
 それら陵辱された婦人警官の制服とロングブーツを見た彼女は一つ溜息のような息を吐いた。

「……フェチって……制服とロングブーツを犯したいのね……私じゃなくて……婦人警官を犯したい……私がこれを着てこれを履いてなかったら……」

 彼女はもう一つ溜息をつく。
 その溜息は婦人警官としての溜息、ではない。女としての溜息のようだった。

「……久々に五人が来たと思ったのに……これじゃ……二人じゃない……私を襲ったのが……私をレイプしたのは……」

 きゅっ、と下唇を噛んだ彼女はそっと右手を自分の陰唇に伸ばした。
 そこは男の精液でべったりと濡れ、まだその中から白濁液が漏れている。

「……足りないわよ……まだ……」

 ぬるっと彼女の秘部に右手の人差し指を滑り込まれる。ごぷっとその隙間から白濁液が溢れて零れ、アスファルトを濡らした。

「まだ……まだ……」

 彼女の指が動き出す。ぬめ、ぐちゅっと白濁液で淫音が立つ。彼女の中でばら撒かれている精液を掻き出すように指が動く。

「まだ……ん……くふぅん……ん……」

 足りない何かを補おうとするように指が動く。彼女の中を掻き回し、感じていた物足りなさを補って行く。
 彼女の左手、婦人警官の紺色の制服に包まれた左腕が動き、露となった乳房を揉み、乳首を摘む。

「ん……んあっ……あは……まだ……ん……まだぁ……」

 ざりっと左脚を包むロングブーツが動き、踵がアスファルトを擦った。
 右脚はロングブーツの中で白濁液を感じながらぬめぬめと指を蠢かせた。

「ん……んんっ……あっ……あっ……私……私は……」

 びくっ、と肩が震える。制帽のつばからかけられた白濁液が零れてぽとり、と乳房に落ちる。

「私は……警察……んっ! 警察官……よ……もっと……もっと私を……襲って……無茶苦茶にして……! こんなんじゃ足りない……!」

 ぐちゃぐちゃぐちゃと彼女の中を滅茶苦茶に引っ掻き回し、乱暴に自分の秘所を襲う。感じた事のないような熱を自分の中で感じ、下腹部から脳髄まで突き上げるような感覚を覚えさせた。

「もっと……もっと……! 私は婦人警官よ……もっと滅茶苦茶にしなさいよ……男だったら私をもっとレイプして! 滅茶苦茶にしてえええっ!」

 ごぼっ、ごぼっと彼女の中からぶちまけられた精液があふれ出た。同時に透明な液体が白濁液を押し出すように出てきた。

「はあ……はあ……はあ……」

 だらしなく開いた口からたらん、と出る舌。肩で息をしながらとろんとした眼差しを自分の秘所に落とす。
 彼女はそっと男の白濁液がまとわりついた自分の人差し指を見るとふふっと薄く笑った。
 そして、その指をそっと自分の口に入れておいしそうに舐めた。

「ん……んはっ……」

 彼女は指を嘗め回したその時、ふと人の気配を感じた。

「……誰……」

 乱れきった婦人警官が顔を上げて訊く。
 そこには男が三人、下衆な笑いを浮かべて立っている。アスファルトの上で座る婦人警官を見下ろすその眼差しはまさに獲物を前にした飢えた肉食獣その物。

「何……」

 一瞬、彼女の顔に笑みが浮かんだがきっ、と強い眼差しを男達に向けた。

「あ、あなた達……何を見てるの! すぐにここから離れなさい! 警察に連絡をしなさい!」

 強い声で命令口調の言葉を男達にぶつけた。
 すると男達の笑みが深まり、頷きあうと一斉に彼女に歩み寄った。
 婦人警官のそんな声と命令には男達を抑止する力はなく、その征服心を滾らす効果しかなかった。
 そして、それを一番よく知っているのは。

「や、やめなさい! もう……これ以上……いやあああああ!」

 悲鳴を上げながら男達三人にうっすらと笑みを浮かべてレイプされる婦人警官の彼女だった。

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