ロングブーツの玩具


 自慢じゃないけど、あたしは結構モテる部類だと思ってる。
 顔はまあまあ、スタイルもまあまあ。でも、なんだか男受けするのよね。自分でもよくわかんないけど。

 高校の3年間で1人の男と付き合った。あたしからじゃなくって向こうから告白って来て。
 少ない? でも付き合うって半年以内だったらノーカンだからそんなもんじゃない?
 高校を卒業して大学に入るとリセット。ゼロから始めて3年間で2人。もちろん、半年以内はノーカンだし、あたしから告白った事もない。
 やっぱり、あたしってモテる。

 それで、男3人と付き合って、10人にはならないと思うけど何人かの男に告白られて思ったのは、男って単純。
 パターンが決まってるって言うのかな、同じ場所にいて「あ、この男、あたしに気がある」ってすぐにわかる。男はわかってない、と思っているんだろうけど、わかるのよね。
 何で、って視線よ視線。
 別にあたしをじーっと見てる訳じゃない。でも、ちらっとでも見た時にわかるの、なぜか。
 なんて言うかな、短い時間でもこう……あたしを見ようとして、ちょっと絡みつくような視線、って言うのかな……難しいわね。
 とにかく、あたしを気にしてますよーって言うメッセージが乗った視線。そんな視線を向けてくるのよねえ。
 その視線をあたしが感じたら決まって喋ってきて、メシでも、っていう風になる。お決まりのルート。
 
 本当、男って女と同じくらいの数がいるのにどうしてこうもみんなワンパターンなんだろ?
 正直、そう言うの飽きちゃったかも。
 女の子は白馬の王子様を待つ、夢見がちな所があるから付いていけない、なーんて言う男がいるけど、それは男達が余りにも退屈でワンパターンだからよ。
 そんなのが周りにしかいなかったら、いそうにない男とかありそうにないシチュエーションを夢見てしまうのは当然でしょ?
 女ばっかりに変な責任を押し付けないで欲しいわ。その前に男自体がどうにかしなさいよ。

 そんな訳だから。
 大学2年生の冬。クリスマスもお正月も終わってイベントごとがない今。
 あたしはフリーになっていた。結局、あの男もありきたりな、つまんない男だったな。
 久々の彼氏がいないってバレンタインを楽しもうかな、なーんて思ってたんだけど、どうも気になる男がいるのよね……。

 あたしはテニスサークルに入ってるんだけど、そこの1コ上の先輩。
 服のセンスがいいとかイケメンとか背が高いとかそう言う事はない、普通の人。他の人よりかはちょっと明るくて喋りやすいかな。
 今までで何度となく見た事のあるような、タイプの男。でも、気になる所がある。

 それはやっぱり、視線。
 サークルに入った時はそれほどでもなかったけど、秋くらいになって突然、男が出すあの「気にしてますよ視線」を感じた。
 またか、って思ってそれに気付かない振りをした。どうせ、何日かしたら向こうから勝手にメシでも、へ続くきっかけ作りが始まるんだから、放置しといた。
 で、次の日。サークルの共同棟で会ったけどその先輩はそんな視線をあたしに向けなかった。向ける素振りすらない。前の日の事はなかったみたいに。
 変でしょ? こう言う視線を向けるヤツって会う度に向けるはずなんだけど、この日はなし。

 その次の日に会うとまた「気にしてますよ視線」が来て、3日開いて会ったら何もなし。次の日会っても何もなし。でも、その2日後に会ったら「気にしてますよ視線:が出て……。
 別にあたしが毎日のように変わってる訳じゃない。でも、先輩の視線はコロコロ変わった。
 あたしを恋愛対象として気にしているのか、あるいはただのサークル仲間、後輩として見ているのか。まるでわからない。
 
 そう言う作戦? でもそんな駆け引きできそうな人にも見えないし。
 恋愛の対象として、じゃないけどこの先輩がどうにも気になる。
 あたしを一体どう見ているのか、何考えているのかってね。



 冬になると外でやるテニスはシーズンオフ、主に部屋の中で無駄話したり、来年の新入部員勧誘の事を考えたりするだけ。
 今日もそんな感じ。寒くて外に出る気もなくなるわ。
 あたしは共同部室で電気ストーブの前に座ってファッション雑誌を見ていた。
 そこに出ている読者モデル。そうそう、これを参考にしたのよ。今日のあたし。

 ファーの付いた白いロングコート。下はブラウンのニットにふんわりとしたベージュのスカート。そして、黒のロングブーツ。
 雑誌見ていいな、って思って似たようなのそろえたけど、このブーツは本当に得した〜。雑誌のヤツから半分とまでは行かなかったけど三分の一くらいで買えたんだし。
 デザインはシンプルでヒールもそんなに高くないけどその分履きやすいし、どんな服でも合いそう。
 こう言うの欲しかったのよね〜……でも、ちょっと革が硬くて歩きにくいかもしれないかな、そこは合皮なんだから我慢我慢。
 でもなあ……足首辺りがちょっとキツいかも。
 こうやって脚を組んでぐにゃぐにゃと足首を動かしていれば……ほぐれるかな?

「おいっす、今日は1人しかいないん?」

 あたしが足首を回しているとそんな声が。
 声の主はそのよくわかんない先輩だった。先輩がドアを開けて立っている。

「……何、してるんだ?」
「足首がキツくって。買ったばっかりだから……」

 あたしが足首に目をやってまたぐにょぐにょと回したその時、感じた。
 何って、あの視線。「気にしてますよ視線」よ。
 しかも今まで以上に強く、熱い視線。もちろん、体が暖まるとかそんなんじゃない。でも、体に刺さっているって感じられるような、そんな視線。
 こんな……付き合っている男でもこんな強い視線は、ない。
 どんな顔であたしを見てるのよ。先輩を見てみる。 

「へえ……それ、新しいんだ」
「先週の日曜に買って……今日初めて履いたんです」

 先輩はあたしの足首を見ている。じっと、まさに気にしていますって感じで。
 そんなに珍しい事じゃないのに。買ったばっかりの靴が慣れないのは男も女も一緒だと思うけど。
 ま、ロングブーツは男が履かないから珍しいと言えば珍しいかも。この蒸れる感じとか締め付ける感じとか、絶対にわかんないでしょ。ファッションも大変なんだから。
 あたしは足首を回すのを止めて脚を床に下ろした。そして、立ち上がって椅子と電気ストーブの周りを歩いてみた。
 
 コツコツコツ。

 踵の音が共同部室に響く。さっきよりは歩きやすくなったかな……ん?

「高かったんじゃない?」

 先輩の声が少し上ずっている。
 視線は相変わらず強いまま。でも、あたしには向いていない。
 ううん、あたしの方は向いている。でも、あたしを見ていない。視線の先は……
 あたしは歩くのを止めて軽く背伸びするようにアキレス腱を伸ばす動きをしてみる。

「いくらだと思います? 7350円でした!」
「へえ……」

 高い、って言うか安い、って言うか分からなくて考えている。と、言うよりも真面目に考えてないって感じ。
 心ここにあらず、ただ適当に返事をしただけって見えた。
 視線は変わらず強く、見つめている物も変わらない……なんで?
 アキレス腱を伸ばすのを止めて今度はちょっと屈伸。

「本革じゃないからキツいんです……なんか、ゴム長履いているみたいで」

 ぎゅむぎゅむ、合皮が軋む……あ、あたしの脚が太くなったんじゃなくって……えーっと、多分、むくんじゃったのよ、きっと。買った時はぴったりだったんだから、きっとそう。
 でも、こうしていると……足首やふくらはぎに合皮が食い込んでいるみたいで……ああん、もう、鬱陶しい!

「へえ……」

 先輩は同じ返事。同じ視線。
 ……そっかあ……わかった。ネットでチラッと書いてあるの見た事あるけど本物って初めて……そうだ。

「先輩、これからなんか予定あります?」
「へえ……え?」

 あたしは先輩を誘って部室を出て学校を出た。コーヒーでも飲みませんか、ってね。
 まあ、先輩は悪い男じゃないから、ちょっと刺激のない男って感じだから誘ったって平気かなってね。
 それよりも。この先輩をもうちょっと、見てみたいなって。
 だって。学校でて一緒に歩いていても先輩、ちらちらとあたしの脚を見てる。そんなにいいのかなあ、この脚。

「先輩、このブーツ、似合ってます?」
「え? あ、うん」

 あたしが訊くと先輩は慌てて顔をあたしに合わせて頷いた。
 慌ててる。動揺してる。全然、こう言うのに慣れてないのねえ。

「ふうん……よかった。なんか、部室から先輩、あたしの脚をちらちら見てるからおかしいって思われてるのかなあって……」
「え、あ、いや、そんなんじゃなくってねえ……えーっと……」

 先輩どぎまぎ。あはっ、おもしろーい。

「て言うか、ちょっとエロい目だったかな〜」
「エロとかそう言うのじゃなくって……」

 先輩があたしから視線を逸らして考える。考えたってムダ。どうせちゃんとした言い訳なんかできないんだし。実際、ちょっとエロい目だったし。

「先輩……ひょっとして、脚フェチなんじゃな〜い?」

 あたしが核心を突いてみる。すると、先輩、さっきまでのおろおろした顔が変わってきっ、とあたしを見た。

「それは違う!」

 そして、きっぱり。
 あれ? 違うの? 
 あたしはちょっとびっくり。てっきり、先輩は脚フェチなんだって思ってた。

「え……違うの? ウソでしょ? ずーっとあたしの脚見てたんだから……」
「脚フェチなんかじゃない…………俺は……」
「じゃ、なんで脚ばっかり見てたの?」
「……脚じゃなくて」
「?」
「……そのロングブーツばかり……見てたんだ」


 先輩は『ロングブーツフェチ』なんだって。
 女王様に踏まれたい、とかそう言うのじゃなく、脚が大好き、ってのでもなくって……ロングブーツを履いた脚が、ロングブーツがたまらなく好きって。
 そう言うのもいるんだ……初めて見るタイプ。
 でも……結構楽しいかもしれない。だって。

「ふう……んふう……」

 ロングブーツを履いたままの脚に頬ずりしたりするんだもん。あたしのふくらはぎと優しく揉んだり、脛に頬を寄せたりきゅっと抱きしめたり……。

 あたしはロングブーツフェチってのがどんなのか、先輩から聞いたけどどうもわかんない。初めて見るタイプだからね。
 だから、あたしの家であたしのこのロングブーツにしたい事して、って言ってみたのよ。
 普通、そんな事言われたら少しはえっ、と思うんだろうけど、先輩は嬉しそうにいいの? だって。今からヤル訳じゃないのに。
 で、あたしの家について玄関のドアを閉めて。あたしがいつもブーツを脱ぐ時みたいに玄関先に座ったらすぐに脚に飛びついてきた。

「はあ……ロングブーツ……」

 ちゅっ。
 軽いキスの音……先輩、ロングブーツにキスをしている。先輩の唇がブーツ越しに脚に伝わってきて……何、この感覚。ぞくっと来たわ……。

「ああ……綺麗だ……」

 先輩がゆっくりと顔を脛の上から下へと動かす。一緒になってブーツにナメクジの足跡みたいな跡がつく……えっ、舐めてる?
 先輩の舌が確かにロングブーツについて動いていく様子がブーツ越しに伝わってくる。
 ……なんだろ。間に革があるからかな……キモいのにキショくない……てか……そのまま舐められるよりなんか、エロい……。
 あたしは足首を動かしてみる。見るだけでも結構エロい目だったから近くになると……。

「……はあ……んはあ……もう……我慢……」

 足首に出来る皺とか艶とか。そう言うのを見た先輩は……えっ? 手がズボンに伸びて……まさか?
 そのままジッパーを下ろして……ちょっ、マジ……

「せ、せんぱ……いっ!」

 ズボンから出てきたのは先輩の……アレ。しかも、ギンギンに硬くなっておっきくなったアレ。
 先っぽは濡れ濡れで赤黒くなってる……もうこんな……あたし、服どころかブーツも脱いでないのに!

「何するの……」
「…………」

 あたしが言っても先輩は何も返さない。ギンギンのアレをあたしのロングブーツに押し当てた。

「はあ……はあ……」

 濡れ濡れのアレはあたしのロングブーツの上でスケートでもしてるみたい。ずるずるっと動いて舐めてた時以上の太くってぬるぬるした跡を残した。
 先輩のアレ……すっごく熱い。ブーツ履いててもなんか、分かる。
 こんなのがあたしに入ってきたら……ちょっ、何考えてるの……。

「はあはあ……」

 先輩のアレがロングブーツから離れてまた顔がブーツとキス。
 そして、ブーツに頬ずりしたり舐めたりしながらまた楽しみだした。
 右手はしっかりとアレを握ってごしごしと擦ってる……ウソ……オナニーしてる……。

「はあはあはあ……」

 あたしの目の前で先輩が……ブーツだけで……変態……でも……なんか……可愛い……。
 こんなのでこんなに興奮しちゃうなんて……あたしが見ている前で夢中でオナニーするくらいに……。
 
「はあ……ロングブーツ……ロングブーツ……!」

 本当にロングブーツが、ロングブーツを履いた脚が好きなんだ……こんなに先輩に好かれるあたしの脚とロングブーツはそんなにいいの?
 撫でたりキスしたりするのはすっごく優しかったし、本当に……
 

「ロングブーツ……いいよ……ロングブーツ……!」

 先輩はロングブーツに顔を寄せて体をくの字にまげてオナニーを続けた。
 その手が、息遣いがどんどんと激しくなっていく。
 あたしも……なんか……変な気分になって来た……別にあたしがヤル訳じゃない、ただ先輩が一人でヤッてるだけなのに……!

「ロングブーツ……ああっ! イクっ!」

 ええっ、どこに出すのよっ!

「ああっ! あああああっ!」

 喉の奥から絞り出すような声と一緒にどぷっ! って精子が出た。しかも、結構な量。溜まってた……ってヤツ?
 出た瞬間、先輩のアレの先っぽはあたしのロングブーツに向いていた。
 だから。
 あたしのロングブーツは先輩の精液でドロドロ。黒色のブーツにねばねばした先輩の白い精液が模様を作った。
 先輩の精液、すっごく熱い。
 ブーツ履いているのに、革で覆われてるのに、精液がかかってるって分かるくらい。

「はあはあはあ……ごめん」

 精液を出した先輩。ドロドロになったロングブーツを見ながらぽつん、と言った。
 あたしは。手を伸ばせば届く所にある真新しいティッシュペーパーを開けて何枚か出した。
 そして、先輩の精液を拭った……これって本当にねばっとしてるからティッシュに吸い取られるって事がなくって塗り広げられていくだけみたい。
 先輩はそれでもブーツを見ている……一途……なのかな……それより……こんな先輩と……ロングブーツの先輩をもっと……。

「先輩」
「え?」
「明日は編み上げのブラウンのロングブーツ、履いていきます……お気にの、ね」


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